研究課題/領域番号 |
23592992
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
入舩 正浩 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (10176521)
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研究分担者 |
森田 克也 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 准教授 (10116684)
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キーワード | 全身麻酔要素 / 鎮痛 / 意識消失 / 不動化 / サブスタンスP |
研究概要 |
侵害刺激によるC線維からのサブスタンスPの遊離は、オピオイドやα2アドレナリン受容体作動薬により抑制されることがマイクロダイアリシス実験により明らかにされている。私達は、科学研究費による研究で、GABA神経刺激による意識消失時にオピオイドのモルヒネやα2アドレナリン受容体作動薬のデキスメデトミジンを併用すると不動化を起こすことを確認している。このことは、不動化が脊髄後角でのサブスタンスP神経の抑制を介して起きていることを予期させる。当該年度では、グルタミン酸受容体サブタイプであるNMDA受容体の選択的遮断薬であるMK-801を単独で高用量(50mg/kg)投与しても正向反射も侵害刺激による体動も抑制しないが、NMDA受容体の遮断はドパミン神経を刺激しマウスを覚醒させることが知られていることからハロペリドールによりドパミン受容体を遮断すると、MK-801は正向反射を消失させるが侵害刺激による体動の抑制(不動化)は生じないことを確認した。さらに、MK-801とハロペリドールの併用により正向反射を消失させたマウスにモルヒネあるいはデキスメデトミジンを投与すると用量依存性に不動化を生じた。しかし、不動化に必要としたモルヒネやデキスメデトミジンの用量は、鎮痛に必要としたこれら薬物の用量に比べ高用量が必要であった。この結果はGABA神経刺激時での結果と一致したが、さらに今回の結果からGABA神経刺激やNMDA受容体とドパミン受容体の遮断が下降性痛覚抑制系を抑制している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度以降は全身麻酔薬の鎮痛・筋弛緩・不動化作用とサブスタンスP、GABA、グリシンの関係を明確にするため、神経化学的手法を用いて、脊髄後角培養細胞からのサブスタンスPの遊離、受容体応答などについて検討する予定であったが、行動薬理学実験での結果が興味深くさらに検討を加えているため、神経化学実験に取り掛かるのが遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
全身麻酔薬の鎮痛・筋弛緩・不動化作用とサブスタンスP、GABA、グリシンの関係を明確にするため、神経化学的手法を用いて、サブスタンスPの遊離、受容体応答について以下の諸点を明らかにする。まず、脊髄後角培養細胞からのサブスタンスP遊離を全身麻酔薬が抑制するか(培養実験)検討する。次に、侵害刺激により促進された脊髄後角での一次求心性C線維からのサブスタンスP遊離を全身麻酔薬が抑制するか、マイクロダイアリシス法を用いて実験する。最後に、サブスタンスPのシナプス後膜受容体への作用に全身麻酔薬が影響するか(生化学実験)、検討を加えていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策を進めていくため、実験動物、試薬、測定キット、HPLCカラムなどを購入する予定である。
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