研究概要 |
胃潰瘍治療薬ゲラニルゲラニルアセトン(GGA)は心筋においてストレス蛋白質を誘導し,心筋保護作用を示す。このGGAによる心筋保護作用は平成23年度,24年度の研究結果から,細胞膜ドメインであるカベオリン-3を介することが明らかになった。今回,GGAによる心筋保護と薬理学的遅延期プレコンディショニング作用/ポストコンディショニング作用との関連を検討した。 【方法および結果】生後1-4日のSDラット心室筋細胞を95% air/5% CO2含有,37℃インキュベーター内で培養した。GGA群, GGA+プレコンディショニング(GGA+Pre群)では,低酸素24時間前に,培養液中にGGA(10μM)を投与した。プレコンディショニング(Pre)群およびGGA+プレコンディショニング(GGA+Pre)群では,低酸素24時間前にδ-オピオイド受容体刺激薬[D-Pen2,5, p-Cl-Phe4]-Enkephain(1μM)を投与した。また低酸素曝露/再酸素化後にポストコンディショニング(Post)群およびGGA+ポストコンディショニング(GGA+Post)群において[D-Pen2,5,p-Cl-Phe4]-Enkephalin(1μM)を投与した。低酸素暴露は, 低酸素チャンバーを用いて6時間低酸素状況 (95%N2, 5%CO2, 37℃) に暴露した。WST-8試薬を用いた蛍光法とトリパンブルー染色により生細胞率を判定した。 GGA投与はEnkephalinによるプレコンディショニングおよびポストコンディショニングとの併用でも,心筋細胞生存率に影響を与えなかった。 以上,今回の実験系ではGGA投与によるストレス蛋白質誘導における心筋保護作用はカベオリン-3を介するがオピオイドプレコンディショニングおよびポストコンディショニング作用には影響しないことが示された。
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