研究課題/領域番号 |
23592995
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
高橋 哲 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (60226850)
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研究分担者 |
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50292222)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 骨膜伸展 / 形状記憶合金 / 骨延長 |
研究概要 |
本研究の科研費(基盤研究C)の採択通知をもって、研究分担者である東北大学の金高弘恭准教授との協議のもと、形状記憶合金(SMA)メッシュの設計を行い、そのプロトタイプなる装置をニッケル含有のNi-Ti SMAメッシュを作製した。SMAメッシュを用いた骨膜伸展骨形成法に類する研究はほとんど報告がないため、骨膜伸展により効率的な新生骨獲得がはかれるメッシュの強度、デザイン、形状回復力をはじめに測定・検討し、その後に生体安定性であるNi非含有SMAメッシュを作製していく計画とした。 日本白色種ウサギの頭頂骨を用いた研究を行い、Ni-Ti SAMメッシュによる骨膜伸展骨形成法を検討した。待機期間2週の後に、形態回復力による骨膜伸展刺激を与え、術後5週と8週での伸展部の骨評価を行ったところ、母骨である頭頂骨側から骨の新生を確認した。評価はマイクロCTおよび組織学的評価により行ったが、経時的な新生骨量の増加を認め、SMAメッシュによる骨膜伸展刺激での新生骨の誘導を証明することができた。 Ni-Ti SMA装置の骨膜伸展に伴う、母骨側からの新生骨の獲得については初めての報告であり、本研究結果のpreliminary reportを日本口腔インプラント学会で研究分担者(平成23年度は研究協力者)である山内健介が発表し、デンツプライ賞を獲得した。本研究が臨床的に注目される内容であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では初年度は動物実験における初期結果を得ることが一つの到達点であり、初年度において骨膜伸展による間隙内の新生骨の獲得を確認できたことは満足いく結果といえる。しかしながら、最終的な段階としては、Ni非含有である生体安定性形状記憶合金の応用であり、その研究に臨む上では、Ni含有の形状記憶合金での至適形態回復力の設定と形状の決定が必須となる。今回の初期研究での進展は、今後の生体安定性形状記憶合金の応用への大きなステップを踏むことができたと考えられる。 また、研究分担者である東北大学歯学イノベーションリエゾンセンターの金高弘恭准教授との研究協力体制を確立することができ、材料的な協議・検討をはかる事ができ、またマイクロCTによる微細構造評価についての検討もはかられたことは大きな進展といえる。 今年度は海外への留学のために研究分担者としては参加できなかった山内健介助教についても、留学先であるオランダ・マーストリヒト大学頭蓋顎顔面外科学講座との類似の骨膜伸展研究について討論を行うことができ、今後の研究に関して新たね視点での研究計画または評価が期待できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
今回のSMA装置は形状、応力とも1種類の検討を行ったため、本装置の備えた形態回復力が最適な条件かどうかは不明であり、今後は装置の厚さ、大きさ、また形態回復力を調整し、効率的な新生骨獲得に向けた要件を検討する。試作した数種類のSMAメッシュ装置を、初年度と同様に動物実験にて獲得新生骨量を評価し、最適な要件を具備した装置を開発する。その上で、同条件のNi非含有の生体安定性SMA装置を作製し、最終的な研究へと進展させていく。 本研究においては、各々の動物実験の結果を随時、国内外の関連学会で発表を行うと共に、口腔外科またはインプラント関連雑誌への投稿も並行して行う予定である。これらの報告で得られる他研究者からの意見、また査読員のコメントも今後の研究に反映させ、より臨床的意義の持つ研究に位置づけていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、至適形態回復力の検討をする目的で、動物実験を中心に行う予定である。使用動物の購入、飼育、また実験に必要な物品の購入を行い、円滑な実験を行えるように配慮する。また、研究分担者と密な連絡を取ると共に、国内外の関連学会での発表、または討論を行うために、それらの学会参加も予定している。
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