研究課題/領域番号 |
23592995
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 哲 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60226850)
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研究分担者 |
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50292222)
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キーワード | 骨膜伸展 / 形状記憶合金 / 骨延長 |
研究概要 |
本年度は形状記憶合金(SMA)メッシュを作成し、SMAメッシュを用いた骨膜伸展骨形成法について、実験動物として日本白色種ウサギの頭頂骨を用いた研究を行った。実験動物を4群にわけ、ニッケル含有のNi-Ti SMAメッシュを頭頂骨に合わせた形態に調整し、全身麻酔下に骨膜下に設置した。待機期間2週の後、形態回復力による骨膜伸展刺激を与え、術後5週、8週での伸展部の骨形成の評価をマイクロCTおよび組織学的評価を行った。MAメッシュにactivationをかけずに設置した群をコントロール群とした。その結果、コントロール群に比較して、SMAメッシュをactivationをかけた群においてはマイクロCTと組織学的評価において、術後5週で新生骨の形成が確認された。本研究は形状記憶合金で骨膜を伸展させて形成されたGapに骨形成を誘導することができることを証明した初めての研究である。以上のことより、骨膜伸展骨形成法は従来の骨移植などと比較し、ドナーサイトの外科的侵襲を軽減することのできる新機軸の骨造成法であることを証明した。本研究成果は複数の国内学会、国際学会で報告し、2011年の日本口腔インプラント学会のデンツプライ賞を受賞した。さらに国際学会においても大韓口腔外科学会の最優秀研究発表賞も受賞した。研究成果の一部は国際誌である、J Biomed Mater Res B Appl Biomaterにacceptされた。このように本年度は臨床的にも国内外で注目され、今後更なる研究の発展が期待できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は骨膜伸展骨形成法が臨床的に有用な方法である可能性を証明できた。またその成果を国内外の学会で報告するとともに、国際誌に投稿しacceptされた。研究計画で形状記憶合金の指摘形態回復力の設定と形状の決定が目標であったが、今回の研究成果は十分にその目的を遂行し得たと考えられる。また研究協力者である山内健介助教は留学先のオランダ・マーストリヒト大学頭蓋学顔面外科学骨膜伸展研究について討論し、今後の研究に関しての大いなる示唆が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ウサギを用いた実験において、一定の研究成果を得た。今後は次の点に焦点を当てて研究を遂行していきたい。 まずは材料についてである。現在SMAメッシュについてはNiが含有されている。しかし臨床応用においてはNiのアレルギーが懸念されるところである。したがってNi非含有の生体安定性SMA装置の作製とそれを用いた実験の実施である。材料については研究分担者である金高弘恭が他の研究において開発中であり、できるだけ本科研費年度内での実験の実施を目指す。もう一つは大型動物による実験である。ウサギで証明できた骨膜伸展骨形成法をさらに大型の成犬を用いて行い、臨床応用の際の至適形態回復力の設定、形状の決定、さらには伸展期間などについての最適条件を検討していき、臨床応用の実施にむけて更なるステップを進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度においては上記のようい動物実験を大型動物、とくに成犬を用いて行いたい。使用動物の購入、飼育、また実験に必要な物品の購入を行い、科研費実施年度内にできるだけ至適形状記憶合金、伸展期間、形状等を決定したいと考えている。その上で国内外の関連学会での発表、論文発表を行い、形状記憶合金を用いた骨膜伸展骨形成法を確立したい。
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