研究概要 |
本課題は、歯髄組織由来のニューロスフェアが重症前脳虚血モデルの転帰に与える影響について、全般的転帰を検討する慢性実験と脳組織における炎症性サイトカインおよび脳由来神経栄養因子(BDNF)のmRNA発現を検討する急性実験の2つから構成される。ラットを用い、総頸動脈閉塞に全身性低血圧を併用する重症前脳虚血を11分間与えた。群分けは虚血を与えないSham群(急性実験のみ)、生食を投与するNS群、歯髄細胞を投与するDPC群、そしてニューロスフェアを投与するNDC群の4群である。虚血3時間後に細胞100万個/mlを静脈内投与した。 慢性実験:前年度報告書にある通り生存期間を1か月から2週間に短縮し終了した。死亡率はNS群で有意に高率であった。虚血後の回復(体重増加)に有意差はなかったがDPC群で良好な傾向があった。水迷路試験は有意ではないがDPC群でより短縮する傾向が見られた。神経運動機能試験は有意ではないがNDC群で良好であった。海馬CA1領域の神経細胞死亡率はNS群76.0±8.0%, DPC群70.5±5.5%, NDC群46.6±22.6%であり、組織学的転帰はNDC群において有意に改善された。 急性実験:上記4群で慢性実験と同様の虚血侵襲を行い、虚血直後、虚血後3時間、6時間、12時間、24時間および対照の6時点で脳組織のTNF-α, IL-1β, IL-6およびBDNFのmRNA発現をRT-PCRで測定した。TNF-α mRNA;虚血後3時間から6時間にかけて増加したが群間差はなかった。IL-1β;DPC群においてのみ12時間、24時間で増加が見られた。IL-6;虚血群間に差は認められなかった。BDNF;DPC群の6時間で高い傾向があった。 結論:歯髄組織に由来するニューロスフェアの静脈内投与は重症前脳虚血後の転帰を改善するが、それはBDNFmRNAの発現増加以外の機序による。
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