研究課題/領域番号 |
23593002
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
大見 寧 神奈川歯科大学, 歯学部, 助教 (10318892)
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研究分担者 |
松本 剛一 神奈川歯科大学, 歯学部, 准教授 (60199867)
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キーワード | bone regeneration / BMP-2 / polyhedra / DDS |
研究概要 |
I下顎骨欠損の作製:メスのビーグル犬に静脈内麻酔を行った。両側下顎の前臼歯と後臼歯を抜歯した後、幅20㎜、深さ8~10㎜、厚さ3㎜の大きさの骨欠損を近心部と遠心部に作製した。 II移植材料:①BMP-2固定化多角体(1.8 x 107 個)ATCスポンジ、②BMP-2固定化多角体(3.6 x 106個)ATCスポンジ、③rBMP-2(5μg)ATCスポンジ、④rBMP-2(1μg)ATCスポンジ、⑤空多角体(1.8 x 107 個)ATCスポンジ、⑥空多角体(3.6 x 106個)ATCスポンジ③解析方法:摘出骨のμCT撮影を行い、画像解析ソフトを用いてデータ解析を行い、骨欠損部の新生骨々量、骨密度を算出した。 結果:再生骨量は、iおよびii群(BMP-2多角体)の再生骨体積は、それぞれ298±35mm3、252.4±41.2mm3(mean±S.E.)であり、iiiおよびiv(rBMP-2)では175.5±12.7mm3、151.8±46.5mm3、vおよびvi群(コントロール)では102.5±20.4mm3、100.5±19.0mm3であった。iおよびii群の再生骨量はv、vi群およびiii、iv群に比べて有意に高いことが明らかであった。iとii群を比べた場合、i群の骨再生量が高い傾向にあったが、両群間には有意差がみられなかった。骨密度は、iあるいはii群(BMP-2多角体)は、それぞれ26958.4±145.7、28002.5±211.3(mean±S.E.)であり、iiiあるいはiv(rhBMP-2)は27214.6±198、29785.5±195.6、vあるいはvi群(コントロール)では26897.5±211.3、27986.6±198.7であった。また健常部皮質骨のCT値は27950.5±189(mean±SE)であり、再生骨の骨密度(骨質)は健常皮質骨とほぼ同等であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アテロコラーゲン(ATC)スポンジをキャリア―としたBMP-2固定化多角体による骨再生法は、rhBMP-2を用いた場合に比べて骨再生効果が優ることが確認された。また多角体とATCスポンジは生体吸収性のため二次的な除去手術が必要ないことなど、顎堤再生治療に有用性が高いことが示唆され、臨床応用が期待される。しかしながら、術後の顎堤は咬合圧という機械的な刺激に常に曝される状態にある。顎堤欠損部に移植されたキャリアーは骨が再生するためのスペースを長期間確保しなくてはならない。しかしながら顎堤に咬合圧が加わることにより移植したキャリアーが破損してしまい、十分なスペース確保が困難となる場合も想定していなくてはならない。そこで、過大な咬合圧にも耐え、機械的損傷の少ないキャリアーの開発も直ちに着手しなくてはならない重要な課題であると考えている。術後の咬合圧に耐え、本来骨再生が必要な場所のスペースが十分に確保できるのでれば、BMP-2固定化多角体の徐放機能を十分に生かせた、より有用性の高い骨再生治療になると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
従来から大型骨欠損部の骨再生のためには、局所の血管新生も必要であることが報告されている。そこで多角体に血管新生因子であるvascular endothelial growth factor-A(VEGF-A)あるいは血管新生作用と幹葉系細胞の増殖作用を有するbasic fibroblast growth factor(bFGF)を固定化したものを、BMP-2多角体に併用することで、より強力で、大型の骨欠損にも応用可能な骨再生治療が可能であると考えて、開発に着手する予定である。また顎骨再生の障壁となる咬合圧に対しても、十分な機械的強度を備えたキャリア―の開発を企業と共同で行う予定でいる。多角体は生体内において約10週間で分解吸収されることがわかっている。また本研究の組織学的解析から、多角体の分解に伴い、マクロファージなどの貪食細胞の存在は否定できたことから、生体の異物反応は回避もしくは軽微に抑えることが可能ではないかと考えている。現在のところ、BMP-2多角体の至適量は不明である。骨欠損の大きさにも依るが、今後、短期的にはBMP-2多角体の至適量を決める必要があると考えている。またヒトへの臨床応用を考えた場合、適応が顎骨再生だけでなく、歯周疾患により喪失した歯槽骨の再生にも応用可能と考えているので、今回、完遂が出来なかった、歯周病モデルの骨再生実験に関しても検討を行う予定でいる。中・長期的には顎骨再生に適した機械的強度が高く、吸収性のあるキャリアーの開発を行いながら、臨床応用に最適な多角体レシピの研究を進める予定でいる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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