研究課題
カイコ(Bombyx mori)サイポウイルスの粒子は多角体と呼ばれるマイクロメートルサイズのタンパク質結晶に包埋されており、長期間ににわたって過酷な環境条件で感染性を保つことができる。近年この多角体の顕著な安定性が、組織工学のためのサイトカイン徐放剤のキャリアーに応用できる可能性が明らかにされた。本研究では、多角体に包埋された骨形成因子であるbone morphogenetic protein-2(BMP-2)を用いて、自然治癒不可能な大きさの骨欠損を完全に治癒できることを示した。研究方法は、吸収性のコラーゲンスポンジにBMP-2を包埋した多角体、あるいはBMP-2タンパク質を含浸させたものをラットの頭蓋骨々欠損部に移植して骨の再生効果を検討した。その結果、吸収性コラーゲンスポンジにBMP-2を含浸させた場合は、移植初期にBMP-2の放出が急激に起こり、徐放性に劣るため、骨欠損の完全な治癒がみられなかった。これは、コラーゲンスポンジに大用量のBMP- 2タンパク質を含浸させた場合でも同様に骨の再生はみられなかった。これに対して、BMP-2を多角体に包埋後コラーゲンスポンジに含浸させた場合、多角体からのBMP-2の徐放効果により、完全な骨欠損の修復がみられた。また再生された骨の骨密度は健常骨と同等であったことから、BMP-2包埋多角体により誘導された骨は成熟した骨であることが示唆された。以上、今後臨床において、BMP-2包埋多角体微結晶は骨再生治療の効果を高めるものと期待される。
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