研究課題/領域番号 |
23593003
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
中島 芽生 鶴見大学, 歯学部, 臨床助手 (70582443)
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研究分担者 |
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
舘原 誠晃 鶴見大学, 歯学部, 助教 (90380089)
徳山 麗子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20380090)
橘 竜佑 鶴見大学, 歯学部, 臨床助手 (80514926)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 再生医療 / iPS細胞 / 口腔粘膜由来iPS細胞 / 分化誘導 / 切片上培養 |
研究概要 |
失われた組織や臓器の再生を目指す再生医療は最も注目される研究分野であり、なかでもiPS細胞を応用した再生医療への実現は大きな期待を持って待たれている。しかし、iPS細胞を応用した組織・臓器への効率的かつ確実な分化誘導法はいまだ確立していない。その理由の一つに、分野誘導のための各種増殖・分化因子などのタンパク質の検索および決定が非常に困難であることがあげられ、膨大なタンパク質の組合せと、さらには未知のタンパク質の検討が必要となることも考えられ、そこには限界もある。そこで、本研究では、実際に再生を目指す目的組織・臓器の凍結薄切切片上でiPS細胞を培養することで分化に必要な各種因子を効率的かつ確実にiPS細胞に作用させることにより分化誘導し、さらにその因子を解析することを目的に、今年度は、まず、実際に使用するヒト口腔粘膜由来iPS細胞につきその多分化能を確認した。本研究で用いるヒト口腔粘膜由来iPS細胞は、ヒト健常頬粘膜より分離した口腔粘膜由来線維芽細胞に、Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycの4因子のトランスフェクションを行い、安定発現細胞として得られたものである。これをbFGF非存在下で浮遊培養により分化誘導し、胚葉体を培養した後、抗α-fetoprotein抗体を用いて内胚葉に、抗α-smooth muscle actin抗体を用いて中胚葉に、抗neurofilament抗体を用いて外胚葉に分化することを免疫細胞化学的に確認し、このiPS細胞が多分化能を保っていることを確認した。さらにマウスから脳、心臓、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、唾液腺を摘出し凍結切片を作製し、この切片上でiPS細胞を培養し、直接的な分化誘導を試み、これらの細胞のmRNAを回収し、またタンパク質の免疫細胞学的解析のために細胞の固定を行った。今後はこのサンプルを用いて、分化誘導の可否について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、今年度は、ヒト口腔粘膜由来iPS細胞の多分化能の確認、実際に再生を目指す目的組織・臓器の凍結薄切切片、具体的には、マウスの脳、心臓、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、唾液腺を摘出し、凍結薄切切片をカバーガラス上に作製し、この上でiPS細胞を播種・培養し、直接的な増殖・分化因子の影響下に、組織・臓器への効率的かつ確実な分化誘導が可能かどうかを検討する予定であったため、現時点で本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに得られた分化誘導を試みたサンプルのmRNAについて、それぞれの組織・臓器に特異的な分化マーカーを指標に、その分化誘導効率をRT-PCR法を用いて解析するとともに、免疫細胞化学的手法により、それぞれの組織・臓器特異的なタンパク質についてその発現を解析する。またタンパク質の回収を行い、ウエスタンブロット法を用いてそれぞれの組織・臓器特異的なタンパク質の発現を検討する。これらの結果を踏まえ、正常臓器の凍結薄切切片上での分化誘導に加え、損傷臓器を用いた凍結薄切切片上での分化誘導も試みる。具体的には、マウス腹腔内に四塩化炭素を投与し、肝臓に障害を与え、薬剤性肝炎を誘発し、このマウスから肝臓を摘出し、障害を与えられることで臓器本来の再生能力が引き出され、適切な増殖・分化因子を産生・分泌している切片上でより効率的な目的組織・臓器への分化を誘導することが可能であるかどうかについて検討する。同様に他の組織・臓器についても障害を与え、これを培養に用いることで分化誘導の効率を上げることが可能かどうかについて検討する。さらに、ここまでの結果により、iPS細胞を効率的に分化誘導することが可能であった条件において、実際にどのような因子が分化誘導に有効であるかを確かめるため、同条件での培養液を回収、あるいは用いた凍結切片をホモジナイズし、含まれるタンパク質を抽出し、その液中に存在する各種タンパク因子を抗体アレイを用いて網羅的に解析し、分化誘導に有効な各種増殖・分化因子を簡便に同定することを目指す。最終的にはこの方法で分化誘導したiPS細胞を実際に再生を目指した目的臓器に移植し、経時的な組織変化と細胞の局在、分布について追跡観察する。さらに再生部位の遺伝子発現やタンパク質発現を確認するとともに長期観察を行い、本方法を用いたiPS細胞による再生医療への応用の可否について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度には、研究計画に基づき、細胞培養用試薬類、分子細胞生物学的検討試薬類、生化学的検討試薬類、組織学的検討試薬類、実験用動物、などに物品費を使用し、成果発表のために旅費を使用するとともに、人件費、謝金、論文印刷費などを計上している。前年度からの繰越金は、今年度に解析を残しているRT-PCR法のための試薬や、免疫細胞化学的手法のための抗体購入費などに充てる予定であり、これは今年度のみでなく翌年度以降の研究計画にも共通して用いることのできる試薬類である。これらの研究費を使用し、本研究を順調に進展させていく予定である。
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