研究課題/領域番号 |
23593008
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
宮前 雅見 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (20298821)
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研究分担者 |
堂前 尚親 大阪歯科大学, 歯学部, 名誉教授 (60115889)
金田 一弘 大阪歯科大学, 歯学部, 研究員 (90533886)
杉岡 伸悟 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (90278573)
小谷 順一郎 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (40109327)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | sevoflurane / heart / cardioprotection / autophagy / ischemia |
研究概要 |
[目的]セボフルランプレコンディショニング(Sevo PC)は虚血心筋を保護するが、その効果は虚血時間が長いと消失する。最近、オートファジーが心筋虚血再灌流障害に関与するとの報告がある。 初年度は虚血前のオートファジーの誘導が長時間虚血により消失したSevo PCの心筋保護効果を回復できるか検討した。[方法]モルモット灌流心で30分または、45分間の虚血後120分間再灌流(IR)を行った群(CTL-30,CTL-45,各n=8)、CTL-30, 45にSevo(2%)を虚血前10分間投与した群(SEVO-30,n=8,SEVO-45,n=9)と、オートファジー誘導剤クロラムフェニコール(CAP)をCTL-45の虚血前20分間とIR中投与した群(CAP-45,n=8),SEVO-45にCAP処置を行った群(SEVO-45+CAP,n=8)、計6群を作製した。これらの群で左心室圧(LVDP),左心室終末拡張期圧(LVEDP),冠血流量(CF),梗塞サイズ(IS)を比較した。虚血前に心筋を採取し、オートファジー関連蛋白質(LC3-I, II)をWestern blotにて、autophagozomeを電顕にて検出した(各n=4)。[結果]ISはSEVO-30でCTL-30に比べ有意に縮小したが、SEVO-45はCTL-45に比べ縮小しなかった。SEVO-45+CAPではSEVO-45で消失した保護効果が回復した。LC3-II/I、autophagozomeは、SEVO-45+CAPで他群に比して有意に増加した。CFは全ての群で差はなかった。IR後SEVO-30のみ他群に比しLVDPが高く、LVDEPが低かった。[考察]長時間虚血により消失したSevo PCの心筋保護効果はCAPを加えることにより回復した。虚血前のオートファジーの誘導は心筋保護における新しい戦略となりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画の初年度としては計画通りに研究は進んでいる。オートファジーが虚血心筋に対して保護的に働くのか傷害的かについては未だ意見の一致を見ていない。我々の今年度得られたデータからは明らかに保護的であることが判明した。しかし、傷害的であるとの報告もあり今後さらなる研究が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
オートファジーが虚血心筋に対して保護的に作用することが初年度の研究で明らかになった。また、この作用は揮発性麻酔薬の虚血心筋保護作用にも関与していると考えられる。今後はこのメカニズムの解明に全力を注ぐ予定である。このメカニズムが解明されれば冠動脈疾患を有する患者の周術期の管理に大きな戦略の一つとなる。オートファジー関連蛋白であるcathepsin B, Beclin-1, LC3-II /LC3-Iなど、アポトーシス関連酵素であるMAP kinases, caspaseの発現をwestern blotと免疫組織化学染色で検討する。これらの発現と梗塞サイズの関係を明らかにする。さらに、これまで提唱されている心筋保護のメカニズムの中で特にミトコンドリアを中心に研究を進めて行く予定である。トコンドリアの生死に大きく関与するmitochondrial permeability transition pore (MPTP)の開口に関して詳細に検討する。特にオートファジーがミトコンドリアMPTP開口にどのように関与するのかを明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後もモルモットを使用して心筋サンプルを採取しタンパク発現などを詳細に検討する。これらの動物の購入(約100匹、1匹;6000円)に研究費を使用する。さらに、オートファジーに関与する蛋白の発現とオートファゴゾームの出現を電顕で検討するための試薬、抗体に研究費を使用する予定である。また、その成果を国内学会(日本麻酔科学会)、国際学会(アメリカ)で発表する旅費や資料作成に研究費を使用する。
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