研究概要 |
今年度は、昨年度から行っている実験の続きを行った。この研究では、ストレプトゾトシン注射後300mg/dl以上の血糖値の糖尿病ラット(DM)も用いた。10週齢のNDM(非糖尿病)とDMを、50週齢のNDMとDMを用い、上顎左第一臼歯を7日間NI-Tiのクローズドコイルを用いて13gで近心に牽引した。右側はコントロールとした。第一大臼歯はパラフィンに包埋し、横断で5μmの連続切片にした後HE染色を施した。切片は、根分岐部より400-550μmの間の50μmの間隔で4枚の切片を観察した。コンピュータイメージ分析ソフトを用い、特定した部分の歯槽骨の割合を、歯槽骨比(AAR)として計算した。統計処理は、WilcoxonとMann-Whitneyを用いた。結果として、(1)若齢ラットにおいて、NDMとDMの間で、コントロール側に比べ実験側は有意に減少している。DMはNDMに比べて、よりAARが小さいことが解った。(2)老齢ラットにおいては、実験側の中ではNDMとDMの間では、AARに有意な差が認められた。(3)NDMとDMともに、実験側では老齢グループより若齢グループの方が、AARは有意に小さいことが解った。結論として、老齢ラットは、若齢ラットに比較して高血糖状態に影響を与えないことが解ったが、今後試料数を増やしていく予定である。この成果は、EOS(ヨーロッパ矯正歯科学会)で報告した。 また今年度は、ビーグル犬を用いて歯に矯正力を加えなかった。これを観察するため、北海道立総合研究機構に協力得て、高性能マイクロフォーカスX線CTシステム(inspeXio, SMX-225CT, SHIMAZU)を用いた。これにより、上顎部分の、顎骨、歯槽骨、歯、歯根膜腔、血管腔等の2次元的および3次元構造を観察し、3次元的関係を把握した。
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