研究課題/領域番号 |
23593014
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
川木 晴美 朝日大学, 歯学部, 助教 (70513670)
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研究分担者 |
近藤 信夫 朝日大学, 歯学部, 教授 (40202072)
高山 英次 朝日大学, 歯学部, 講師 (70533446)
神谷 真子 朝日大学, 歯学部, 助教 (80181907)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | CCNファミリー / CCN2 / CTGF / CCN3 / NOV / 軟骨分化 / MAPK経路 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
初年度はマウス胎児を用いて、種々の軟骨組織のパラフィン包埋切片および組織破砕サンプルと初代軟骨細胞におけるCCN2とCCN3の発現・分布パターンを解析した。そして、機能の重複等が予想される他のCCNファミリーメンバーについても同様に解析を行った。(1)軟骨原器の現れる胎生9.5日から18.5日マウス胎児の頭部、胸郭、四肢等の切片を野生型及びCCN2欠損マウスから作成し、メッケル軟骨や、下顎頭、肋軟骨、四肢の軟骨分化過程におけるCCNファミリータンパク質の分布パターンと、CCN2欠損により生じる障害を、HE染色や軟骨基質を標的とした特殊染色等、組織化学的手法にて詳細に解析した。その結果、CCN2欠損マウスでは長管骨において軟骨分化の遅延が観察された。正常軟骨組織においては他のCCNファミリーメンバーが胎生14日以降から見られるのに対しCCN3は胎生12日から発現しており初期軟骨分化に関与する可能性が示された。(2)胎生11.5日目の肢芽、18.5日目の肋軟骨、4週齢マウスの骨髄より初代細胞を採取し軟骨分化誘導培養にて得たRNAサンプルと各組織を破砕して得たRNAサンプルから発生・分化段階依存的なCCNファミリー遺伝子の発現パターンの変化をリアルタイムPCR法にて解析した。その結果、各軟骨組織においてCCN3が初期分化段階で強発現していることを見出した。(3)これまでに我々は、MAPK経路を介した骨芽細胞の増殖と分化過程におけるCCNファミリータンパク質の作用と、軟骨細胞の増殖および最終分化過程におけるCCN2の作用について明らかにし報告してきた。そこで、次年度に予定しているCCNメンバーの機能解析とその発現メカニズム解析の準備段階として、現在、分化段階の異なる種々の軟骨組織の切片を用いてリン酸化ERK,p38,JNKの分布について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に軟骨細胞分化におけるCCN2とCCN3の機能解析に関連して、関節軟骨細胞に対するCCN3の機能を解析し軟骨基質産生を促進することを明らかにした研究、および骨芽細胞分化におけるCCNタンパク質の機能を解析した研究を含む3編の論文を国際誌に発表している。こうした一連のCCNタンパク質研究過程で組織の免疫染色に有効な抗体の選別や、より効率的な初代細胞の調整、培養実験の最適化を本研究を進めながら平行して行ってきた。以上のことから当初の研究計画通り未分化間葉系細胞から軟骨細胞への初期分化と、軟骨細胞の最終分化という軟骨の全分化過程におけるCCN2およびCCN3とその他のCCNファミリーメンバーの発現時期とタンパク質の分布について詳細な解析を行うことができ順調に研究が進展しており、現在までの達成度は十分といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果をふまえ、未分化細胞から軟骨細胞への初期分化と増殖、軟骨細胞に分化後の増殖と最終分化過程におけるCCN2,3とその他のCCNメンバーの発現時期と機能および作用メカニズムについて明らかにするため以下の計画で研究を進める。(1)CCN2およびCCN3と機能的に重複が予想されるCCNファミリーメンバーが互いにその発現を調節している可能性があることからリコンビナントCCNタンパク質を添加後の他のメンバーの発現変動を調べる必要がある。(メンバー同士が発現調節を担っている場合、siRNAによるノックダウン実験でもメンバー同士の相互関係を考慮する必要がある。)具体的には、軟骨分化における機能を解析するため、マウス胎児から調整した未分化繊維芽細胞や軟骨細胞に、リコンビナントCCN2,3あるいは他のCCNファミリーメンバーを作用させ、各々のCCNファミリーメンバーの発現量に変化が見られるかどうかをまず最初に検討する。次いで軟骨分化マーカー遺伝子の発現調節への関与の有無をリアルタイムPCR法にて解析する。(2)(1)の結果をふまえてsiRNAにてCCN2,3および他のCCNファミリーメンバーをノックダウンした場合のCCN2,3を含む軟骨分化関連因子の発現動態を解析する。用いる細胞は肋軟骨由来の軟骨細胞と胎生11.5日のマウス肢芽から調整した肢芽細胞の高密度培養を予定している。siRNAの導入にはリポフェクション法あるいはキュベット式エレクトロポレーション法を試し、効率の良い方法を選択する。蛍光色素Cy5で標識されたdsRNAにて導入効率を検討した後CCNメンバーをターゲットとするsiRNAを用いて、軟骨分化への影響を解析する。(3)CCNファミリーメンバーの機能発現メカニズム解明のためまずERK,p38,JNKのMAPK経路に着目しリン酸化MAPKの動態変化について解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の推進計画に基づき研究を進めるのに必要な機器としてまず、siRNA導入効率評価のために蛍光観察装置が必要であることから、本年度に導入した倒立型位相差顕微鏡に落射蛍光装置を装備する。消耗品については、細胞調整の都度マウスを購入する他、細胞培養実験および必要に応じて行う組織染色実験に使用する試薬や器具は本年度に十分量購入済であるので不足に応じて追加購入を予定している。さらに、本年度と次年度の研究成果を基礎歯科医学会等で発表を予定しており、成果発表旅費として計上する。これら研究費使用予定額の概算をいかに列挙する。Nikon 落射蛍光装置 490,000円遺伝子発現解析実験用試薬 50,000円実験動物(マウス)・培養用試薬・器具類200,000円成果発表旅費など 60,000円
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