研究課題/領域番号 |
23593019
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
馬場 祥行 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (70251535)
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研究分担者 |
鈴木 聖一 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90187732)
辻 美千子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90345281)
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キーワード | 骨延長術 / 牽引力 / 張力センサ / 上顎骨 / 側方偏位 |
研究概要 |
上顎の著しい形態異常を呈する先天性疾患の症例においては、上顎の前後的な劣成長のみならず側方への偏位を示すものも少なくない。本研究においては、創外型骨延長装置であるRED systemに超小型張力センサを組み込むことにより、上顎を前方および側方に牽引する際の牽引力、すなわち上顎骨にかかる力の大きさを経時的および経日的に計測し、RED systemによる上顎骨延長術のモニタリングを図ることに着目した。骨延長術による上顎の三次元的な移動を行う症例において、牽引力の分布を解析することを本研究の目的とした。RED systemはその牽引装置が複雑な構造である上に、口唇部に近接して装着される。そのために、装置の外から計測器にて牽引ワイヤーの張力を正確に計測することは困難である。顎顔面領域における骨延長時にかかる力の大きさの正確な計測結果に関しては、前年度の実績として、張力センサの接続部の形態を改良することによりさらに19mmにまで小型化することに成功した(SSK社製、LT6の改良型)。 当該年度は、Le Fort I型上顎骨延長法を適応した口唇口蓋裂患者6名を対象とし、経時的および経日的に延長装置にかかる牽引力の測定を行った。上顎骨の変化量として、術前・骨延長中・骨延長終了時の側面頭部X線規格写真からANS の水平移動距離と、移動距離の実長を計測した。また、上顎骨の変化量から延長効率を算出した。その結果、骨延長前後の上顎骨の平均水平移動距離は8.6±2.1mm、実長では11.2±2.7mmであり、左右の平均牽引力の最大値は18.4±5.5Nであった。骨延長中の上顎骨の変化量と牽引力は、全症例において有意な正の相関を認めたが (p<0.05) 、延長効率と上顎骨の変化量・年齢・性別・裂型に明らかな関連性を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RED systemはその牽引装置が複雑な構造である上に、口唇部に近接して装着される。そのために、装置の外から計測器にて牽引ワイヤーの張力を正確に計測することは困難である。現在までの実績としては、張力センサの接続部の形態を改良することによりさらに19mmにまで小型化することに成功した。また、張力計を用いた6症例の上顎前方移動様相について解析した。しかしながら、側方偏位を呈する症例に対する3次元的な解析が不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
臨床データの蓄積を図る。RED systemの活性化の前後で張力の計測を行う。活性化前の牽引ワイヤーの張力が片側の活性化により上昇し、反対側は下降するが、2本の牽引ワイヤーを交互に活性化することの繰り返しにより両側の牽引力が上昇していくという結果が得られている。しかしながら、上顎偏位の改善を図る症例においては、前方移動の2本のワイヤーに加え、偏位改善のための追加ワイヤー(3本目)を設置するので、計測結果はさらに複雑となる。さらに活性化後には、僅かながらも徐々に張力が減少する傾向があり、これは活性化による牽引力の上昇により上顎が移動していることを示しているものと推察されている。また、当分野では延長術の終了に際して、あらかじめオーバーコレクションを行い十分な前方移動が達成された後、牽引用スクリューの巻き戻しにより牽引力を下げ、その後の上顎の後戻りの傾向を観察した後に、創外固定装置を撤去している。したがって、スクリューを巻き戻して徐々に力を弱めた際の張力の変化に関しても経時的に計測することにより、創外固定装置撤去後の保定に必要な力の大きさの決定に役立てる。上記の計測を経日的に行い、その変化を記録する。さらに、治療後の後戻りについても評価する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として張力センサ(ST6-5S)を2個購入するとともに、データ分析用のディスクトップコンピュータの費用等を計上している。結果発表および情報収集のための国内・外国旅費、ならびに業績の印刷および出版のための費用を計上した。
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