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2011 年度 実施状況報告書

新規歯根形成細胞マーカーによる歯根形成・吸収機構の解析~抗がん剤投与モデル~

研究課題

研究課題/領域番号 23593024
研究機関新潟大学

研究代表者

三富 智恵  新潟大学, 医歯学系, 助教 (00313528)

研究分担者 河野 芳朗  新潟大学, 医歯学系, 助教 (60303129)
前田 健康  新潟大学, 医歯学系, 教授 (40183941)
早崎 治明  新潟大学, 医歯学系, 教授 (60238095)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード歯の形成障害 / 抗がん剤 / 歯根 / ヘルトビッヒの上皮鞘 / 象牙芽細胞
研究概要

歯根形成期におけるアルキル化抗がん剤による歯根形成障害の機序を形態学的に解明した。本年度は異なる歯根形成段階でのアルキル化抗腫瘍薬の投与が歯根形成に与える影響に焦点を当てて解析した。生後13(歯根形成初期)、15(歯根形成中期)、19日齢(歯根形成後期)Wister系ラットにBusulfan 7.5mg/kgを腹腔内投与し、生後30日目に灌流固定し免疫組織学的に観察した。DMSO投与対照群では、根尖部に象牙芽細胞が規則的に配列し、ヘルトビッヒの上皮鞘にも異常は観察されず歯根形成の障害は観察されなかった。一方、Busulfan投与群では、アルキル化抗腫瘍薬による小児癌化学療法患者に多見されるような歯根短縮という歯根形成異常が観察された。組織学的には歯根根尖部には骨様象牙質の形成がみられ、根尖部の破壊の程度は投与時期が早いほど大きかった。ラミニン免疫染色では、すべての実験群で免疫局在は観察されなかった。CK14免疫染色では、13、15日齢投与群では歯根表面のマラッセの上皮遺残、および、ヘルトビッヒの上皮鞘も消失していた。Nestin 免疫染色では、すべての実験群で骨様象牙質上に存在する細胞成分と、それに埋入された細胞成分がNestin免疫陽性を示していた。以上のことから埋入された細胞成分と骨様象牙質表層細胞は、象牙芽細胞由来であることが示唆された。また、ヘルトビッヒの上皮鞘が歯根形成に関与する細胞群の分化に影響を与えることが報告されていることより、活発に増殖する歯根形成期の細胞群、特に、ヘルトビッヒの上皮鞘の細胞がBusulfanによって傷害されたことにより、歯根伸長に必要なヘルトビッヒの上皮鞘の細胞の供給、維持が困難となり、ヘルトビッヒの上皮鞘が破壊され、正常な歯根伸長形成が阻害された可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

H23年度では抗腫瘍薬による歯根形成モデルを確立した。すなわち、抗腫瘍薬が歯根形成のどの時期に最も大きな障害を与えるのか明らかにするとともに、投薬量および投薬方法の基礎データを得ることができた。抗腫瘍薬の影響は予想したように、薬剤投与が歯根形成の初期であればあるほど歯根形成に与える影響が高いことが明らかになった。また、ラットではBusulfan 7.5mg/kg腹腔内投与が抗腫瘍薬の歯根形成障害モデルに適当であることがわかった。また、象牙芽細胞マーカーとしてNestinおよびヘルトビッヒの上皮鞘マーカーとしてCK14を用い、歯根発生において重要な役割をすると考えられるこれらの細胞成分が、抗腫瘍薬の投与時期の違いによってどのような影響を受け、どのような歯根形成障害の結果をもたらすのか明らかにすることができ、当初の目的を達成することができた。

今後の研究の推進方策

H23年度の実験結果を基に、歯根形成障害の経時的な解析を行う。実験モデルとしてラットBusulfan15日齢投与モデルを用いる。これまでの実験結果より、実験群の歯根の長さはコントロールマウスの3日後に相当するため、組織学的な障害は抗腫瘍薬投与後3日前後に明らかになることが予測される。よって、本年度の目的は、Busulfan15日齢投与モデルの歯根障害がどのように起こるのかBusulfan投与後、1日、3日、5日、7日、9日後の組織像を免疫組織学的に解析し、ヘルトビッヒの上皮鞘、骨様象牙質の形成に焦点を当てて経時的に観察する。具体的にはヘルトビッヒの上皮鞘の消失がどのように起こるのか明らかにするためにTUNNEL 法を用いてアポトーシスの有無を明らかにする。骨様象牙質に関しては、象牙芽細胞の分化に焦点を当て、象牙芽細胞特異的マーカーを用いて、基質形成(象牙質基質タンパク)の発現および局在、細胞極性の変化をGolginの発現を解析することによって明らかにする。さらに、ヘルトビッヒの上皮鞘の消失がセメント芽細胞の分化にどのような影響を及ぼすのか解明するために、セメント芽細胞特異的マーカーを用いて解析する。

次年度の研究費の使用計画

本年度の研究目標となる、抗腫瘍薬による歯根根尖部崩壊の経時的な細胞動態解明にはH23年度に未使用であった研究費とH24 年度研究費が充てられる。以上で得られた成果については、基礎歯科医学会(郡山)での発表を予定しており、研究費の一部は旅費として使用する。また、英文雑誌への投稿も予定しており、投稿に関わる英文校正、投稿料、印刷費等も予定される。

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公開日: 2013-07-10  

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