研究課題
本研究は、GFPラベルマウスを用いた他家歯牙移植により歯髄の治癒を明らかにすること、加えて、間欠投与追跡パラダイムにより幹細胞の動向を検討することを目的とした。まず、胎生動物にBrdUを間欠投与することで、ゆっくりとした細胞分裂周期の長期ラベル保持細胞(LRCs)を発現させ、移植歯の歯髄におけるネスチン免疫反応と LRCsの反応を観察した。その結果、濃染するLRCs(おそらく組織幹細胞または前駆細胞)および顆粒状の LRCs(おそらく前駆細胞または分化した細胞)は歯髄に維持されており、歯冠および歯根歯髄において、それらはいくつかの新しく分化した象牙芽細胞様細胞にコミットされた。濃く染まるLRCsの数はほとんど一定であったのに対し、顆粒状のLRCsはやや減少するものの、14日まで比較的高いレベルのままであった。一方、 GFP と野生型マウスを用いた他家歯胚移植実験では、ドナー細胞が象牙芽細胞と血管細胞を含む歯髄細胞に維持されており、ホスト由来樹状細胞様細胞や血管内皮細胞もまた術後に歯髄に遊走したことを示した。この所見は、正常の歯の形成過程においてでさえ生後に歯髄細胞集団が変化することを示唆しており、結果として歯髄の分化能力に影響を及ぼしている。したがって、歯胚移植後のホスト細胞の移住によって起こる歯髄細胞集団の生後変化は、萌出臼歯の歯髄が少量の複能性細胞を含むが、一方で未萌出臼歯の歯髄は象牙芽細胞の前駆細胞が豊富であるという事実を説明する。また、TOP-GALマウスを用いた再植実験では、歯髄幹細胞/前駆細胞が存在すると思われる歯髄中央部血管周囲にβGalの発現が見られ、歯髄再生過程で一過性に発現が上がることから、歯髄幹細胞ニッチの維持へのWntシグナルの関与も伺われ、今後さらに検討する必要がある。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件)
Cell Tissue Res
巻: 356 ページ: 357-367
10.1007/s00441-014-1818-8.
J. Endod
巻: 40 ページ: 1566-1572
10.1016/j.joen.2014.05.005.
J Dent Res
巻: 94 ページ: 112-120
10.1177/0022034514556536
Clin Oral Investig.
巻: 18 ページ: 2045-2053
10.1007/s00784-013-1172-3.
Japanese Dental Science Review
巻: 50 ページ: 69-77