研究課題/領域番号 |
23593027
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡橋 暢夫 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (40150180)
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研究分担者 |
大嶋 隆 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 研究員 (80116003)
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キーワード | pili / oral streptococci |
研究概要 |
平成23年度における研究では、口腔レンサ球菌 S. sanguinis に pili が存在すること、病原性レンサ球菌の pili とは遺伝子レベルでもタンパク質レベルでも大きな相違があること、 pili が細胞外マトリックスタンパク質や唾液タンパク質と結合することなどを明らかにすることができた。この成果を踏まえ、平成24年度は、S. sanguinis 以外の口腔レンサ球菌における pili の分布を調べた。ゲノムデータベースを参照し、A 群レンサ球菌、 B 群レンサ球菌、肺炎球菌、腸球菌などの病原細菌の pili 遺伝子と相同性のある遺伝子の有無を PCR 法で探索した結果、う蝕病原細菌である S. mutans および S. sobrinus では pili 関連遺伝子は検出されなかった。また、口腔常在菌である S. salivarius にも pili 関連遺伝子は存在しなかった。ところが mitis group に属する口腔レンサ球菌については、肺炎球菌で発見された2型線毛 PI-2 pili が S. oralis, S. gordonii, S. mitis から検出された。 肺炎球菌における PI-2 pili の保有率は約 20-30 % と報告されているが, mitis group の口腔レンサ球菌における PI-2 pili の保有率は 50-60% であり、肺炎球菌よりも広く分布していることが示唆された。 S. sanguinis の pili の研究に関しては、前年度の研究をさらに進展させるべく、これが口腔内定着に関与している可能性をマウスを用いて調べることを計画していた。ところが、S. sanguinis は野生株であってもマウス口腔に定着しないという予想外の結果が得られ、様々な条件を検討したものの、この研究は断念せざるを得なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスを用いた動物実験では、 S. sanguinis の野生株がマウス口腔に定着しないという予想外の結果になったことは残念であった。しかし、口腔レンサ球菌における pili の分布については、 S. mutans などのう蝕病原細菌には存在しないことが明らかになった一方で、病原レンサ球菌である肺炎球菌の PI-2 pili が mitis group に属する口腔レンサ球菌に広く分布しているという知見を得ることが出来た。これは口腔レンサ球菌の pili の機能を考える上で大きな成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
病原レンサ球菌である肺炎球菌の PI-2 pili が mitis group の口腔レンサ球菌に広く分布しているという知見を踏まえ、この PI-2 pili の分布や発現、その機能を知ることが次年度の課題である。現在 PI-2 pili の遺伝子クローニングを行っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度 PCR 機器の購入にかかる費用が節約できたという事情もあって、本年度の研究費にも若干の剰余が発生した。その一部は現在掲載予定の論文の掲載費用に充当する予定である。次年度の支出予定に大きな変更はなく、ほぼ申請書に記載した通りになると考えている。
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