研究課題
【目的】近年、食道への酸逆流で咬筋筋活動が誘発されることが示唆されている。また、NERD患者の食道粘膜で酸を感知する侵害受容器との関連が示唆されている。しかし、食道への酸逆流と咬筋筋活動および侵害受容器との関連については不明な点が多い。本研究では侵害受容器に着目し、ラット食道粘膜へ酸・ペプシン刺激を負荷し、咬筋筋活動と侵害受容器の発現亢進について検討した。【資料と方法】資料はWister系雄性ラットを用い、鼻腔からカテーテルを挿入し食道下部に到達させ、酸・ペプシン溶液、または生理食塩水を2日間昼夜15分間ずつ注入した。咬筋筋活動を記録し、2日目の咬筋活筋活動について検討した。刺激終了後、食道を摘出し、Total RNAを抽出した。両群の侵害受容器をreal-time PCR法により比較・検討した。【結果】酸・ペプシン暴露群で咬筋筋活動(頻度・時間)が有意に多かった。各侵害受容器m-RNAの発現量の比較では、生理食塩水を負荷したときの各遺伝子発現量を1とした場合に、酸・ペプシン刺激時ではTRPV1で2.13倍、PAR2で2.08倍、ASIC3で19.96倍、TACR1で4.96倍の遺伝子発現量を認め、全ての遺伝子において有意に多く発現していた。【考察】酸感受性イオンチャンネルは、痛みの知覚、機械刺激受容に関連する。感覚神経終末に発現するTRPV1が活性化すると、細胞内Ca2+濃度の上昇に伴いサブスタンスPが放出され、神経原性炎症が起こる。PAR2は痛みの情報伝達に関与しており、この活性化でサブスタンプPの遊離が促進され、神経原性炎症が誘発されることが示唆されている。今回、ペプシンを含む酸溶液を食道粘膜に負荷したところ、咬筋筋活動が誘発され、各侵害受容器の発現増大を認めた。これらの結果は食道への酸刺激によって各侵害受容器が増加したことから咬筋筋活動を誘発した可能性が考えられた。
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Pediatr Int
巻: 56 ページ: 24-30
10.1111/ped.12201