研究課題/領域番号 |
23593037
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
前田 綾 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10457666)
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研究分担者 |
宮脇 正一 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80295807)
八木 孝和 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (10346166)
友成 博 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70398288)
松口 徹也 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10303629)
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キーワード | 機械的刺激 / ケモカイン / サイトカイン / MyD88遺伝子欠損マウス / 矯正力 |
研究概要 |
研究の目的は、矯正学的歯の移動で生じる炎症様反応に、過大な咬合力や歯周病による炎症反応が生じた場合のサイトカインやケモカインの動態と細胞シグナル伝達機構を解析することである。まずはじめに、炎症反応において重要な役割を担っているTLRやIL-1のアダプタータンパク質であるMyeloid differentiation factor 88(MyD88)が、機械的刺激に対するシグナル伝達経路に関与するのかを明らかにすることにした。従って、MyD88遺伝子欠損マウス(MyD88(-/-))の骨芽細胞を用いて、機械的刺激によるケモカインやサイトカインの発現誘導やシグナル伝達経路を解明するとともに、IL-1βの中和抗体を投与した実験を行い、機械的刺激におけるMyD88の働きを明らかにした。 WTの骨芽細胞では、機械的刺激後にMIP-2の発現は増加し、MAPキナーゼ活性化が認められたが、MyD88(-/-)の骨芽細胞では認められなかったことから、機械的刺激によるケモカインの発現誘導およびMAPキナーゼ活性化には、少なくとも部分的にMyD88を介していることが示された。さらに、IL-1βの中和抗体を投与した実験において、MIP-2の発現やMAPキナーゼ活性は、MyD88(-/-)の骨芽細胞での実験と同じ傾向を示したことから、機械的刺激によるケモカインの動態には、MAPキナーゼ活性によるIL-1βを介したシグナル伝達が関与し、MyD88を間接的に介す伝達経路が示唆された。 また、vivoでの実験が困難であったことから、開咬患者における咬合接触や下顎下縁平面角の開大などの咬合刺激が、歯周組織や歯に及ぼす影響を解明する研究を追加した。この研究結果により、開咬患者の歯根が短いことが明らかとなり、咬合刺激が歯根の形成に重要であることが示唆され、論文が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度は、骨芽細胞に機械的刺激を負荷したときの生化学的メディエーターのmRNAおよびタンパク産生の解析、細胞シグナル伝達機構の解明を行うことを計画しており、概ね計画通り進行している。vivoの実験も計画していたが、MyD88遺伝子欠損マウスは長期間の生存が困難であり、vitroのみの実験を行っている。vivoの実験の代わりに、矯正患者における咬合接触などの咬合刺激や矯正力と歯周組織や歯根の関連を調査する研究計画を追加した。開咬患者の咬合刺激と歯根長の関連を調べ、論文が掲載され、成果を上げた。
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今後の研究の推進方策 |
機械的刺激によるケモカインの発現には、MAPキナーゼ活性によるIL-1βを介したシグナルを経由し、MyD88を間接的に介す伝達経路が示唆されたため、さらにIL-1βを中和した条件下で詳細な実験を行う。その後、実験結果をまとめて、論文を執筆する。また、vivoの実験のかわりに、口唇口蓋裂を伴う患者の矯正治療による骨の改造に関する研究を追加し、現在論文投稿中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養実験に必要な抗体などの物品、成果発表、および論文執筆後の投稿料に使用する予定である。
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