研究課題/領域番号 |
23593040
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
上地 潤 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (80372879)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / 外科的矯正治療 / 顎変形症 / 顔面非対称 / コンピュータ支援診断 / 三次元セファロ分析 |
研究概要 |
本研究の目的は,初診時の患者データから三次元構築した患者モデルの歯(歯列)および頭蓋顎顔面骨格の空間的配置(相対位置・姿勢)が示す幾何学的データから,患者個人がもつ形態学的特徴を定量化し,問題点の抽出,整理,理解が行える客観的矯正診断法を確立すること,さらには従来法では困難とされてきた顔面非対称を伴う矯正患者に対する的確な三次元治療目標の設定を実現することにある. 平成23年度では,精度の高い仮想患者モデルの構築と空間的基準座標系の設定手法を確立することに主眼を置いて本課題に取り組んだ.その手順と成果を以下に示す. 1)頭蓋顎顔面骨格情報と歯列情報の取得・処理:X線CTのDICOMデータから頭蓋顎顔面骨格モデルを生成した.また開口位と咬頭嵌合位の咬合状態を三次元計測して得た点群データに画像処理を行い,2つの顎位の位置情報を持つ歯列モデルを生成した.2)三次元画像融合:頭蓋顎顔面骨格モデルと歯列モデルを基準マーカーを基にIterative Closest Point法による位置合わせを行い,患者の詳細な頭蓋顎顔面骨格形態と歯列形態を表現した仮想患者モデルを生成した.3)仮想化患者モデルの細分化:仮想化患者モデルを脳頭蓋・上顎複合体と下顎骨,上顎歯列,下顎歯列の4要素に細分化した.4)空間的基準座標系の設定:脳頭蓋・上顎複合体から表面形状基準法を用いて正中矢状平面を抽出し,これを作業平面に左側外耳道上縁点と眼窩下縁点を指定して座標系を設定した.他の3要素に対しても同様に正中矢状平面を抽出後,各要素の持つ解剖学的特徴点を2点指定して座標系を設定した. 以上のことより,仮想患者モデルを構成する4要素にローカル座標系を設定し,これらの相対位置・姿勢を基準座標系の3平面上で観察することで患者の持つ特徴量を抽出することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の到達目標としては,精度の高い仮想患者モデルの構築と空間的基準座標系の設定手法を確立することに主眼を置いた.研究開始当初は乾燥頭蓋でファントムモデルを作製し,X線CT撮像と歯列三次元計測を行い仮想化ファントムモデルを生成して実空間のファントムモデルと仮想空間のファントムモデルを比較することで仮想化したモデルの精度と信頼性を調査する予定であった.しかし本研究で使用する頭蓋顎顔面骨格情報取得のためのX線CT装置と歯列情報取得のためのサーフェススキャナが臨床応用する上で十分に高い精度を有するとの文献や学会発表を散見するようになった.そこで本研究に使用する計測機器がトレーサビリティを確保しているものと判断し,これらの項目を簡略化して本研究を遂行した.結果,今年度では仮想患者モデルの構築と空間的基準座標系の設定手法の確立はもとより,仮想患者モデルを4要素に細分化し,各々に設定した座標系の相対位置・姿勢から患者個人のもつ形態学的特徴を抽出することが可能となった.以上のことから到達目標と照らしてみると,それ以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で最初に掲げた目標の客観的矯正診断法の確立における患者個人の形態学的特徴量の抽出に関しては,本年度で概ね達成することができた.今後は特徴量を抽出する作業工程の効率化と簡素化,高速化を図り,一般臨床家が日常的に利用できるだけの診断ツールにまで発展させることを次年度以降の究極の到達目標とする.それを実現するためには,現在分析に使用している高価なハイエンドCADソフトウェアからオープンソースのソフトウェアが活用できるプラットホームへの移行を行い,新しい環境下で同様のデータを簡潔に導き出せる手法を再提案する.また過去に診断に使用した患者データを本研究の提案手法を用いて分析し,矯正患者のもつ形態学的特徴を調査する.これにより新しいシステムの信頼性と可用性を実証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は,主にプラットホームの変更に伴い分析に用いるハードウェアとソフトウェアを一部変更すること,また本研究の成果を国内外の多くの学会や研究会で発表し,ジャーナルに投稿すること等に使用する予定である.
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