研究課題/領域番号 |
23593040
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
上地 潤 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (80372879)
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キーワード | 三次元画像診断 / 外科的矯正治療 / 顎変形症 / 顔面非対称 / コンピュータ支援診断 |
研究概要 |
本研究の目的は、未治療の患者データを基に三次元構築した仮想患者モデルの歯列および頭蓋顎顔面骨格を構成する各要素の空間的配置(相対位置・姿勢)より求めた幾何学的データから、個々の患者がもつ形態的特徴量を抽出し、ここから導き出した問題点を体系的に整理・理解できる客観的矯正診断法を確立することにある。これにより、従来の方法では困難とされてきた顔面非対称を伴う不正咬合患者(以下、顔面非対称症例)の的確な診断と三次元治療目標の設定を可能にするシステムを構築することを最終到達目標としている。 24年度では、前年度で確立した新しい分析手法を活用して顔面非対称症例がもつ形態学的特徴を明らかにする目的で、仮想患者モデル(n=32)の上顎複合体に対する下顎の不調和と上下顎歯列に対する各顎骨の不調和との関連性を三次元で検討した。 結果、前頭面における上顎複合体に対する下顎骨の姿勢と下顎骨に対する下顎歯列の姿勢との間に負の相関を認めた(r=-0.75)。体軸面における上顎複合体に対する下顎骨の姿勢と下顎骨に対する下顎歯列の姿勢との間に負の相関(r=-0.58)、上顎複合体に対する下顎骨の左右的位置と下顎骨に対する下顎歯列の左右的位置との間に負の相関(r=-0.77)、前頭面における上顎複合体に対する下顎骨の姿勢と上顎複合体に対する上顎歯列の姿勢との間に正の相関(r=0.88)、上顎複合体に対する下顎骨の左右的位置と上顎複合体に対する上顎歯列の左右的位置との間に正の相関(r=0.85)を各々認めた。一方、体軸面における上顎複合体に対する下顎骨の姿勢と上顎複合体に対する上顎歯列の姿勢との間には、唯一相関を認めなかった(r=0.23)。 以上のことより、顔面非対称症例における上下顎歯列は、顎間関係の不調和と左右差の程度に対応し、各顎骨内でそれをマスクするような位置と姿勢を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時に本研究で掲げた研究目的である歯(歯列)および顎顔面骨格の空間的配置特徴(構成要素間の相対位置・姿勢)に基づく客観的矯正診断法の確立に関しては、23年度で既に概ね達成できていた。そのため本年度では研究内容を進展させて、本学所蔵の未治療の患者のデータに本法を適用し、その有効性を確認した。 その結果、顔面非対称症例がもつ形態的特徴を三次元で体系的に整理し理解できることが確認された。本法は、顔面非対称を伴う不正咬合患者の診断基準や分類、更には治療ガイドライン作成に有益な情報を得るために有効な方法であると考えられる。以上のことから申請時の計画に照らしてみると、それ以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で既に方法の信頼性と可用性を概ね実証することが出来たと考える。今後は、本法の作業工程の効率化と簡素化、高速化を図り、一般の臨床医が日常的に利用できる環境を構築することを次年度の到達目標とする。そのためには、現在使用している高価で操作が煩雑なプロユースのソフトウェアから、比較的容易に使用できるオープンソースのソフトウェアが使用できるプラットホームへの移行を図り、新しい環境下においても同様に有用なデータを導き出せる手法を再提案したいと考えている
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は、物品費として、プラットホームの変更に伴って分析に用いるハードウェアとソフトウェアを一部変更すること、旅費としては、本研究の成果を国内外の学会または研究会で発表すること、また、その他の支出としては、ジャーナルに投稿するための校正・投稿・印刷費として各々使用する予定である。
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