研究課題/領域番号 |
23593042
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
鍵谷 忠慶 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (30405774)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 骨芽細胞 / microRNA / 骨リモデリング / 時計遺伝子 / マイクロアレイ / RANKL / 骨吸収 |
研究概要 |
【目的】生物リズムは、睡眠、体温、血圧、内分泌等にみられる周期的変動である。近年、このような生物リズムを利用した「時間治療」が注目されている。これは、歯科矯正学では、歯や顎骨に外力を加えた場合、それに対する反応(歯の移動量等)に周期性が存在するので、それに応じた最適な外力で効率よく治療することができないかという考えである。本研究では、遺伝子発現を翻訳レベルで制御するmicroRNAに着目し、「周期性」という概念を取り入れた新規治療法開発の基盤を形成することを目的とする。歯に外力を加えた場合、牽引側で骨芽細胞、圧迫側で破骨細胞が出現することは、よく知られている。microRNA研究分野では、骨芽細胞で研究が進んでいる一方、破骨細胞については、あまり進んでいない。そこで平成23年度は、TNF-αとRANKLで破骨細胞分化を誘導した時のmicroRNAの発現変化を網羅的に検討することにした。【方法】 マウスマクロファージ細胞株RAW264.7を用いて実験した。TNF-α単独では、破骨細胞が形成されなかったので、TNF-αとRANKLを組合せて作用させた。使用したRANKL濃度は10ng/mlという低濃度で、単独では破骨細胞分化を誘導出来ない濃度とした。TNF-α/RANKLを作用させてから0, 24, 82時間後にtotal RNAを回収し、マイクロアレイ解析を行った。また、発現変動の大きかったmicroRNAについて、qRT-PCR法によって、アレイ解析の結果を検証した。【結果と考察】 TNF-α/RANKLによって2倍以上変動した成熟microRNAは44種類あり、このうちmiR-1224等は、破骨細胞分化に伴ってその発現が増加し、miR-223等は減少を示した。これらのことから多数のmicroRNAが、TNF-α/RANKLによる破骨細胞分化を制御していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、計画当初、以下の予定であった。1. 破骨細胞分化におけるmicroRNAの発現変動を網羅的に検討する。2. 得られたデータをTarget Scan やmiRandaといったソフトウェアを使って、時計遺 伝子のmRNAのどのsiteと結合する可能性が高いか、予測する。3. miRNA Expression Reporter Vector へ標的時計遺伝子の3’UTR領域をクローニングし、ルシフェラーゼアッセイにて、そのmicroRNAが直接結合することを確認する。実際には、1および2は終了し、その一部を論文としてまとめ、投稿中であるが、3までは実験する時間がなかった。これには、東日本大震災の被災地としての影響も少なくない。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に、破骨細胞分化に重要と考えられるmicroRNAを抽出することができたので、平成24年度は、これらを過剰発現やノックダウンして、形成される破骨細胞の数等について検討する。また、ルシフェラーゼアッセイによって、これらのmicroRNAが、どのタンパク質の翻訳を制御しているか明らかにしたい。歯の移動においては、圧迫側における破骨細胞の出現(形成)のみならず、個々の破骨細胞の骨吸収力も重要になる。当初の予定では、破骨細胞分化のみを考えていたが、本年度は骨吸収機能の制御についても検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年(平成23年)本学基礎講座は、矢巾町新キャンパスへ移転した。これに伴い、実験環境が少し変わり、細胞凍結保存用に液体窒素保存容器が必要となったので、平成24年度予算に設備備品として、180,000円計上した。また、消耗品(ルシフェラーゼアッセイ用の人工合成遺伝子や生化学試薬、リコンビナントタンパク質等)に580,331円、研究成果発表(国内)に100,000円の支出を予定している。その他の経費として、論文投稿費・別刷り印刷費に80,000円、英文論文校正費に40,000円、外注マイクロアレイ解析に220,000円計上した。
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