研究課題
人体には少なくとも約100兆の細菌が存在し、細胞数の10倍に達すると言われている。ヒトの皮膚や消化器、生殖器や口腔などに生息する細菌叢の全貌を捉え、ある疾患の原因解明に役立てようとする試みは近年盛んに行われている。そこで、我々のグループはこれまでに、主に小児口腔に存在する細菌叢の解明を目指す取り組みを行ってきた。研究代表者の所属する小児歯科診療室に来院する患児およびその母親から得られた口腔内のswab検体を試料とし、シーケンサーによる解析を行ったところ、小児の口腔の細菌叢は成人よりも多くの細菌種が存在している傾向にあり、また個体間でバリエーションが豊富であることが分かった。こうした細菌叢のバリエーションが、齲蝕や、低年齢において生じる哺乳齲蝕にどのように関与しているかについては現在も解析を進めているところである。しかし、これまでに消化器の細菌叢について個体間の違いが偽膜性大腸炎(RCDI)や潰瘍性大腸炎の原因になっている可能性が高いと指摘されていることから考えると、小児の個体間における口腔内細菌叢のバリエーションの豊富さは、齲蝕をはじめとする口腔疾患の発生に一定の影響を与えている可能性が高いと考えられる。また、2種類の齲蝕原性細菌Streptococcus mutansやS. sobrinusとの協調あるいは競合作用を示すことで齲蝕の発生に影響を与えうる細菌種の検索を行った。本課題では、特に小児口腔における乳酸桿菌の検出率および菌種の同定、口腔内状況との比較検討を行った。その結果、試料を得た小児の65%より乳酸桿菌を検出した。齲蝕のない患児に比べ、齲蝕を有する患児からは乳酸桿菌の検出率が優位に高かった。今後齲蝕の病原性を研究するためには、ミュータンスレンサ球菌にのみ着目して研究を進めるのは不十分であり、このように検出頻度に差が認められる菌種についても、齲蝕発生への関与の有無やその程度について検討していく必要がある。
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