研究課題/領域番号 |
23593045
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
白川 哲夫 日本大学, 歯学部, 教授 (00187527)
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研究分担者 |
浅野 正岳 日本大学, 歯学部, 准教授 (10231896)
三枝 禎 日本大学, 歯学部, 講師 (50277456)
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キーワード | 呼吸 |
研究概要 |
Mecp2ヘテロ欠損雌マウスならびにC57BL/6J野生型雄マウスを本学動物実験施設にて飼育し,両者を交配することでMecp2欠損雄マウス(Mecp2 -/y)を得た。 生後2,3,5,7,9週でMecp2 -/yと野生型雄マウスの脳を4%パラフォルムアルデヒドにて灌流固定したのち取り出して薄切凍結切片を作製し, glutamic acid decarboxylase 1 (GAD1)およびvesicular inhibitory amino acid transporter (VIAAT)についての免疫染色を行った。レーザー共焦点顕微鏡にて,延髄腹外側部の呼吸中枢でのGAD1 ならびにVIAAT陽性終末の局在を画像により解析した。その結果,GAD1免疫陽性シグナルは主として疑核の腹側部に局在する小型の神経細胞に認められた。また,VIAAT陽性終末は,疑核内の細胞の周囲に多く認められたが,GAD1陽性細胞が多く存在する腹側呼吸神経細胞群の周囲にも認められ,局所的な神経回路を形成していることが推測された。 生後2週で,Mecp2 -/yと野生型雄マウスの孤束核ならびに延髄腹外側部から組織をパンチアウトし,DNAを抽出した後,GAD1の近位プロモーター領域に存在するCpG配列について,メチル化レベルをバイサルファイトシークエンス法により解析した。まず孤束核について,20個のCpG配列を対象に調べたところ,NGFI-Aのコンセンサス領域に位置するCpGについて,Mecp2 -/yと野生型雄マウスでメチル化レベルの違いが認められ,GAD1活性ならびにGABA産生に影響を与えている可能性が示唆された。延髄腹外側部については解析を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた,MeCP2欠損マウスの顎舌骨筋および横隔膜からの筋電図の測定と解析については,マウスの繁殖が順調に進まなかったこと,手術対象となるMeCP2欠損マウスを,通法通りに電極埋め込み手術ができるだけの週齢まで生育させることが難しいことがあり,この年度も野生型マウスを対象としたコントロール実験に留まった。今後,手術の成功率を向上させて,より若年のマウスを対象に研究を行う必要があると考えられる。 MeCP2欠損マウスの脳へのmecp2遺伝子導入と呼吸異常の改善については,レンチウイルスベクターによる導入技術がまだ確立しておらず,実施までさらに時間を要する見通しである。 延髄スライス培養組織からの細胞内活性酸素の定量については,現在脳スライス上で発生する活性酸素量の光学的測定の基本手順が確立したところであり,Mecp2 -/yと野生型雄マウスでの比較は次年度になる。 一方,脳幹の呼吸関連中枢でのGABA陽性細胞の異常が,Rett症候群モデルマウスの病態に密接に関わっているとの最近の論文報告から,平成24年度は,当初計画していなかった呼吸関連中枢でのGAD1プロモーター領域のメチル化解析を実施した。Mecp2 -/yと野生型雄マウスでの比較で,GAD1活性に影響を及ぼしていると考えられるCpG部位でのメチル化レベルの違いを確認できたことは,今後の研究の方向性を考えた場合,重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
1)呼吸関連中枢でのGAD1プロモーター領域のメチル化解析の研究をさらに推進する。 2)MeCP2欠損マウスの延髄の薄切切片を作製したのち培養ディッシュで器官培養を行い,蛍光試薬としてDCFH-DAを用いて延髄の各部位への入力線維を電気刺激して蛍光画像を取得し,蛍光強度の変化をMeCP2欠損マウスと野生型マウスで比較する。 3)上記1)と2)の実験と並行して,慢性電極埋め込み型マウス筋電図測定装置を用いて,MeCP2欠損マウスの顎舌骨筋と横隔膜からの筋電図の同時測定を行い,呼吸リズムと顎運動の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に購入予定の消耗品のうち,使用量が予定を下回ったものがあったため,計上してあった予算の一部を次年度の消耗品購入に充てることとした。次年度の研究費は,消耗品,研究成果発表のための学会参加旅費,論文校正料,掲載料として使用する。
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