研究課題/領域番号 |
23593046
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中嶋 昭 日本大学, 歯学部, 助教 (50297842)
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キーワード | TGF-beta / 口蓋裂 / 二次口蓋 / 分子生物学 / 成長・発育 |
研究概要 |
【目的】従来、我々はTGF-β type II receptor (TβRII)およびTGF-β type III receptor (TβRIII)の発現抑制が二次口蓋癒合を遅延させ、TβRIIIおよびTβRIIIのsignaling pathwayが口蓋形成における重要性であることを明らかにしてきた。しかし、二次口蓋癒合時のTβRIIおよびTβRIIIの両receptorをknock downした場合のsignaling pathwayについては、未だ明らかとなっていない。そこで、本研究ではマウス口蓋の器官培養にて両receptorをsiRNAによりknock downを行った際のsignaling pathwayについて、下流遺伝子であるSmad2のリン酸化とRunx1、Tbx22、Msx2/3の転写因子に焦点をあて検討した。 【試料および方法】口蓋器官培養を用いてE13のマウス二次口蓋にTβRII/III siRNA をtransfectionし、72時間器官培養した。両receptorの発現が抑制されているかを確認した後、 Smad2のリン酸化および転写因子の発現について定量解析を行った。 【結果】 口蓋の器官培養では、siRNAの濃度依存的にTβRIIIおよびTβRIIIのタンパク発現は減少し、300nMのsiRNA transfection条件下で、両receptorを約80%発現抑制することができた。両receptorのknock downにより、Smad2のリン酸化が阻害され、転写因子については、特にRunx1およびTbx22の遺伝子発現がコントロールに比較し有意に減少した。 【結論】TGF-βのsignalingにおいて両TβRIIおよびTβRIIIの機能は非常に重要であり、下流遺伝子が影響を受けることで二次口蓋癒合の遅延が生じることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.TβRIIおよびTβRIIIのSmall interfering RNA (siRNA) 処理下における二次口蓋成長発育の観察:胎生13日目のマウス口蓋に濃度300nMのsiRNAを含有したBGjb medium (Gibco) 溶液にて72時間organ cultureを行う。その後、HE染色にて口蓋の癒合について顕微鏡下で観察する。 2. Quantitative real-time RT-PCRによるTβRIIおよびTβRIIIのmRNA発現の定量解析:MEE細胞のmRNAの抽出を行い、1 st strand RT-PCR法でcDNA合成を行う。PCR primerを設計合成し、RT-PCR法にて遺伝子発現の定量解析を行う。 3. Western blot法によるTβRIIおよびTβRIIIのタンパク発現量の定量解析および免疫染色:胎生13日目のマウス二次口蓋をsiRNA処理し,organ cultureしたsampleを,lysis bufferにてhomogenizeを行い,SDS-page Western blot 法にて,TβRIIおよびTβRIIIのタンパク発現量をコントロールと比較し検討を行う。 以上1~3に記載した「研究の目的」について、マウス胎児E13の二次口蓋についてTβRII/IIIのsiRNAをtransfectionし、72時間まで培養を行い、その後HE染色を行いpheno typeについて観察したところコントロールに比較し二次癒合の遅延を観察した。定量解析においては、RT-PCR法およびWestern blot法にて、それぞれのreceptorの発現が約80%抑制されていることを確認し、免疫染色した結果においても同様の結果が得られた。また、下流遺伝子であるSmad2のリン酸化および転写因子についても阻害されていた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23、24年度で得られた結果を基にして,平成25年度以降はsiRNA処理した際、down stream遺伝子であるMAPKおよびTGF-βとの関係の深いとされているExtracellular matrix (ECM)遺伝子発現の観察を行う。定量解析においては、Western blot (SDS-page)法にて,MAPKのリン酸化とECMのタンパク発現を観察する。さらに,Quantitative real time RT-PCR法にて遺伝子発現の定量解析についても検討を行う。 1. 免疫染色:siRNAを処理したサンプルを4% paraformaldehydeで固定した後,凍結切片を作製し,免疫染色kit(Zymed)にてECM、中でもMMP2, 3, 4およびTIMP2, 4の免疫染色を行い発現を観察する。 2. Down stream遺伝子およびECM発現の定量解析:siRNAのtransfect確認後,down stream遺伝子であるMAPKのリン酸化について観察を行う。また二次口蓋の成長に関与しているとされているECMの発現について,タンパク定量はWestern blot法,遺伝子解析はreal time RT-PC法にて定量解析を行う。 3. Receptorをknock downした際のMEEのcell proliferation:100μMの5-bromo-2deoxyuridine (BrdU)を反応させ、回収後、BrdU detecting kit (Zymed)にて染色を行い、陽性細胞ついてカウントし、コントロールと比較する。また、apoptosisのdetectionには、TUNEL in situ cell death detecting kit (Rosche)を使用し、同様にpositive cellカウントを行い、コントロールと比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に申請した予算は、平成23年度研究費にて購入した試薬が残っており、新たに購入せず2万円程度の支出残金となった。平成25年は、新たに試薬を購入し、サンプル数を増やし、dataの確認を行うとともに、TGF-βのdown stream遺伝子であるMAPKのリン酸化、およびExtra cellular matrix(ECM)の発現について焦点をあて、タンパク発現および遺伝子発現をコントロール群と比較検討を行う予定である。さらに、knock down した際のMEEのcell proliferationについても観察を行う。 1.組織培養:胎生13日目のマウス口蓋を濃度300nMのsiRNAを含有したBGjb medium (Gibco) 溶液にて72時間organ cultureを行う。 2.定量解析:siRNAのtransfectの確認については、Western blot法によりreceptorの発現量を確認した上、MAPKおよびECMの抗体を使用し、遺伝子発現をコントロールと比較検討する。また、ECMの定量解析はQuantitative real time RT-PCR法にて遺伝子発現の確認を行う。 3. MEE細胞のcell proliferationの観察:5-bromo-2deoxyuridine (BrdU)を反応させ、回収後、BrdU detecting kit (Zymed)にて染色を行い、陽性細胞ついてカウントし、コントロールと比較する。Apoptosisのdetectionには、TUNEL in situ cell death detecting kit (Rosche)を使用し、同様に陽性細胞のカウントを行い、コントロールと比較検討する。 以上、実験動物、siRNA合成料、抗体、各種detecting kitおよび汎用試薬等の物品費の購入が必要となる。
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