研究課題/領域番号 |
23593047
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
内川 喜盛 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (00176679)
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研究分担者 |
白瀬 敏臣 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (20247018)
岩崎 てるみ 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (60515609)
吉野 園子 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (10549083)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 幼児 / 唾液 / フッ化物 / 低濃度 / 齲蝕予防 / 無機イオン / タンパク / 口腔衛生習慣 |
研究概要 |
幼児の唾液中フッ化物(F)イオン濃度とF製剤使用習慣との関連性、低濃度F製剤添加後の唾液中Fイオンの動態(唾液性状との関連性)を検討する事を目的に、幼児の歯科検診、唾液の採取、唾液中ミュータンスレンサ球菌および乳酸桿菌のレベルの測定、また口腔衛生習慣のアンケートを採得した。 その結果、唾液中フッ化物濃度とミュータンスレンサ球菌、乳酸桿菌レベルとの関連性は認められなかった。しかし、アンケートから得られた口腔衛生習慣との項目から1日のブラッシング回数との関連性を認め、ブラッシング時のフッ化物含有歯磨剤の使用が唾液中のフッ化物濃度に影響を与えていることが示唆された。さらに、幼児の唾液中のフッ化物濃度は再石灰化が期待できる0.02ppm以下であり、積極的なフッ化物製剤の応用の必要性が示唆された。今後さらにサンプル数を増やし、計測、集計する予定である。 また、低濃度Fを唾液に添加すると実際添加され期待される濃度のFイオン濃度にならず、遊離Fイオン濃度の低下が認められた。そこで、唾液中のタンパクであるムチンとアルブミ、およびCa、K、Naの無機イオンにて作製した人工唾液での低濃度Fイオンの動態について調べた。その結果、各要因での低濃度Fイオン濃度の低下を認めた。さらに、タンパク質とCaの液においては、単体の和に比べ大きく減少した。ことのことから、CaとタンパクではFイオンとの結合において相乗効果があることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
幼児唾液中のフッ化物濃度および口腔衛生習慣との関連性を調べるため、幼児の唾液および口腔衛生習慣についてのアンケートの収集を行っている。当初120名の採取を計画していたが、現在、協力が得られた幼児が40名と予定数より下回っている。引き続き採取を行い、試料数の増加を目指す。一方、唾液中における低濃度フッ素の動態については、無機イオンおよび唾液中のタンパクとの関連性から新たな知見が得ることができ、予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、超微量Fの測定が可能なフローインジェクションシステムを応用し、次の項目について明らかにする予定である。(1) 4~5歳幼児を対象として平衡時唾液中のFイオン濃度を精密に測定し、F製剤使用習慣と唾液中Fイオン濃度との関連性を検討することにより平衡時唾液中F濃度の上昇に影響を及ぼすF製剤の摂取方法を明かにする。(2)唾液中への低濃度F製剤の添加によるFイオンの動態(唾液性状との関連性)を検討することにより、試適濃度維持のための添加Fイオン濃度および必要添加量を明らかにする。(3) 以上の結果を幼児のための適正なF製剤の使用指針の一助にし、さらにその補助具として臨床の場で使用できる唾液中適正F濃度測定試薬の試作を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.23年度に引き続き、1年後の試料の採取と、測定を行う。また新たに30名の被験児の追加を行う。被験児の追加を行った場合、ベースライン調査を行い、平成23年度と同様に1か月、3か月、6か月後の唾液試料採取と測定、1年後に上記の調査を行う。尚、被験児数が都合により少ない場合は、平成25年度も引き続き行う。2.採取唾液を用いて、唾液中の遊離Fイオンの濃度とタンパク濃度および各種無機イオン濃度との関連性を検討する。唾液中タンパク濃度の測定は、吸光度計を用いながら徐タンパクおよびタンパク添加をおこなった唾液の遊離型Fイオン濃度の動態をフローインジェクション法を用いて計測し、齲蝕予防に適切な唾液中遊離型Fイオン濃度の維持法を検討する。特にタンパクと無機イオンとの交互作用が考えられ、この点について詳細に検討する予定である。 採取唾液を用いて、唾液中のFイオン濃度測定とlanthanum-alizarin化合物添加による吸光度との関連性を検討し、試適濃度の測定キットを試作する。作製後、実際に保育園園児の口腔内状況と本試作品の結果との検討も行う予定である。
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