研究課題/領域番号 |
23593048
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
河上 智美 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (30277595)
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研究分担者 |
苅部 洋行 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (50234000)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 抗腫瘍薬 / シクロフォスファミド / マウス / 小児 / 歯根形成 |
研究概要 |
口腔領域においても小児がん治療後の晩期合併症と考えられる歯の先天性欠如や歯根の形成障害などが認知されるようになってきた。化学療法に使用されるシクロフォスファミドを用いて、マウス臼歯の歯周組織におよぼす影響について病理組織学的観察により検討した。【対象と方法】哺乳期のICR系マウスを用い、生後12日齢に実験群にはシクロフォスファミド[商品名:エンドキサン、塩野義製薬(株)]を各群それぞれ30, 50, 100, 200mg/kgとなるよう調整し腹腔内投与した。生後20日齢まで飼育した後、灌流固定し下顎骨を採取した。EDTA脱灰後、パラフィン包埋による連続薄切標本を作製した。H-E染色に加えて、サイトケラチンの特異抗体を用いた免疫組織化学染色を施した。観察対象は下顎第一臼歯とした。【結果】H-E染色では対照群の象牙芽細胞は、象牙前質に向かい密な細胞層を形成し、規則正しく整列していた。一方、実験群の30および50 mg/kg群では、明らかな象牙芽細胞の形態の変化は認められなかったが、100 mg/kg群および200 mg/kg群では象牙芽細胞の配列が乱れ、細胞質は狭窄し始めていた。 またサイトケラチンの免疫染色による検討では、対照群の歯根根尖部にはサイトケラチン陽性細胞がシート状に認められた。実験群の30および50 mg/kg群では、サイトケラチン陽性細胞はシート構造を保持していたが、100および200 mg/kg群では、その構造は断裂し、消失していた。【考察】対照群の歯根尖部でサイトケラチン陽性細胞を認め、ヘルトヴィッヒ上皮鞘と考えられた。実験群では、高濃度のシクロフォスファミドの投与により象牙芽細胞やヘルトヴィッヒ上皮鞘の形態が変化しており、これら歯根形成に関与する細胞の変化は、その機能に異常が生じ歯根形成が正常に進行しない可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗腫瘍薬(シクロフォスファミド)を小児期マウスに投与し歯根形成および歯周組織の変化について、組織学的に検討をした。平成23年度に計画していた通り、動物を使用して、組織学的な検索を行うことができた。シクロフォスファミドがある濃度以上では、歯根形成に対して阻害的に作用することが観察された、免疫染色も行い、歯根形成に関与するヘルトウィッヒ上皮鞘の関与も示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度には、計画をしていたシクロフォスファミドの歯根形成の組織学的検討がほぼ予定通りに行えた。しかし23年度の年度末に計画していた動物実験が、施設利用予定状況により使用不可能となったため、実験動物の飼育および実験を24年度に行う予定なった。よって、この実験のための予算研究費が23年度内に使用できず、次年度に繰り越されることとなった。 本年度(平成24年)は、前年度の結果を基にして、シクロフォスファミドの経日的な影響について検討を加える。繰り越された動物実験は5月初旬に予定されており、動物の飼育を行い、歯根形成障害が不可逆的な反応であるかを調べる。とくに免疫染色を中心に実験の計画をしている。前年度の未使用分の研究費もこの際合わせて使用する予定である。 また今年度の後半には、組織学的な検討に加えて、歯根の形態変化を評価できるようにマイクロCTなどの方法を利用して3D化を行い、立体像について詳細を調べる予定である。 さらに本年は、学会等に参加し、現在までの成果の報告と今後の研究方法などについて討議を予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に引き続き動物実験を行う予定である。マウスを投与対照群と実験群の2群に分け、抗腫瘍薬(シクロフォスファミド)を実験群の仔マウスに作用させて、その歯周組織に対する変化をみる。本年は免疫組織学染色を行うための器具器材や新たに試みる酵素染色のために必要な器具を消耗品として購入の予定である。前年度に未使用となり繰り越される研究費については、5月より始める動物実験の際に動物の飼育費や実験の消耗品代として使用する予定である。 また、得られた結果を集計して、薬剤の濃度およびその経時的な歯根形成に対する変化を考察するために、データのコンピュータ処理や統計処理の講習、技術研修会の参加にも研究費を利用する。 これらをまとめて報告するために、資料の収集(論文や書籍など)および学会参加などを行う。本年度は、これらにも研究費を適宜使用していく。
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