研究課題
昨年度までの研究において、安静時唾液中の抗酸化能やタンパク質成分であるヒスタチンの含有量と歯周病との関連性について検討を行った。その結果、健常者に比較して、歯周病易罹患を特徴とするDown症候群(DS)群では、小児期より唾液中のヒドロキシルラジカルの消去活性が高まっている一方で、ヒスタチンの含有量は減少していることが明らかとなった。そこで最終年度である本年度は、本研究課題の目的である「歯周病予防につながる唾液抗酸化成分のエビデンスの獲得」を目指し、予定していた歯周組織サンプルに変えて、この2年間行ってきた唾液サンプルそのものに注目し、唾液たんぱく質と歯周病との関連性について詳細な研究を行った。まずこれまでのデータのバックグランドを裏付けるため唾液中のタンパク質の濃度を測定した。その結果、DS患者では健常者に比較して若年者、40歳以上の者ともに安静時唾液中のタンパク質濃度が増加していた。また、DS群においては唾液中のタンパク質濃度が小児期より高く、しかし、40歳以上の者と比較すると有意な変化はみられなかった。一方で、健常者のタンパク質濃度は小児期で低値を示し、40歳以上の者では有意に高値を示した。DS群では安静時唾液中のタンパク質の含有量が増加しているにも関わらず、小児期よりヒスタチン5の含有量は減少していることが明らかとなった。DS患者では唾液中の有効な生理活性物質の減少や歯肉炎、歯周病などの慢性炎症や全身疾患に関与して発現した変性タンパク質の増加などの可能性が考えられた。小児期から口腔疾患、全身疾患に対して生体の防御機構が働いているが、加齢に伴い発症する様々疾患の悪化に防御機構が十分に対応できない可能性が考えられた。DSと健常者の唾液を用いた2D-DIGEによるプロテオーム解析も行い、タンパク発現に違いがあることを確認しつつある。
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