研究概要 |
ギャレクチンー1(Gal-1)のマクロファージ受容体を検討する目的で、まずヒトリンパ腫由来単球細胞U937に対してPMAを用いて刺激しマクロファージに分化させる系を確立することとした。その結果、誘導されたマクロファージは形態的・遺伝子発現的に効率よく分化し、さらにE-LPS刺激により炎症性サイトカイン遺伝子の発現が増加したことから実験系を確立したと考えられた。そこで、本実験系にrh-Gal-1,CS-Gal-1を添加しIL-1β、IL-6,COX-2,TNF-αの遺伝子発現を検討したが、ラット腹腔内由来Primary マクロファージの反応と異なり、Gal-1による各種炎症メディエーターの抑制作用は認められなかった。すなわち、ヒトリンパ腫由来単球細胞U937からPMA刺激で誘導されたマクロファージにはGal-1受容体が存在しない可能性があることが明らかとなった。 次に、P.gingivalisを用いて実験的歯周病発症ラットを作製し、Gal-1,還元型ガレクチンー1(CS-Gal-1)ならびにGal-1抗体をラット口腔内に添加しその抑制作用の検討を行うこととした。まず、P.gingivalisに対して各蛋白質が直接的に作用するか否かを検討するため、通法に従い培地に細菌を播種し、ラット口腔内Gal-1濃度0.05ng/ulを指標として0.01~100倍濃度の各蛋白を作用させた結果、すべての濃度でP.gingivalis発育の阻害作用は認められなかった。そこで、歯周病モデルラットを作製し検討した。用いた各蛋白質の濃度は、×10、×100倍でコントロールも含め各群6~7匹とし計8群で検討を加えた。その結果、P.gingivalis単独で作用したものに比べ、有意差は認められなかったがGal-1×100に骨吸収の抑制作用の傾向が認められた。
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