研究課題/領域番号 |
23593053
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
朝田 芳信 鶴見大学, 歯学部, 教授 (20184145)
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研究分担者 |
伊平 弥生 鶴見大学, 歯学部, 講師 (40200018)
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キーワード | ELマウス / Lef1遺伝子 / Shh遺伝子 / LAMA5遺伝子 / 歯胚消失 / インテグリン受容体 |
研究概要 |
1.Lef1遺伝子の発現について:in situ hybridization (ISH)の結果より、EL/seaマウスの生後5日では内エナメル上皮の一部に発現が認められたが、コントロールであるEL/Kwに比べその発現は抑制され、7日以降では発現が消失していた。さらに、免疫染色の結果から、5日と10日齢ではLef1の発現はみられず、7日齢で歯胚(形態異常)の基底細胞部にタンパクの発現がわずかに認められた。 2.Shh遺伝子の発現について:ISHの結果より、EL/seaマウスでは、いずれの日齢でも発現は認められず、EL/Kwマウスと大きく異なっていた。しかし、免疫染色結果では、5日齢の歯胚の遠心側の一部で発現が疑われたが、不明瞭であった。また、7日齢では歯胚の基底細胞でわずかに発現していた。10日齢では歯胚の一部に発現が疑われたが、不明瞭であった。 3.LAMA5の発現について:EL/Kwマウスでは、5日齢において内エナメル上皮に強い明瞭な発現が免染により確認できたが、EL/seaマウスでは歯胚全体に発現がみられ、コントロールとは全く違う発現パターンであった。一方、EL/ Kwマウスの7日齢、10日齢では内エナメル上皮から歯乳頭のエナメル結節付近に発現が移り、さらにはエナメル芽細胞、象牙前質に発現が認められた。しかし、EL/seaマウスでは、7日齢、10日齢で発現は見られなかった。すなわち、EL/seaマウスでは、コントロールとは全く違い発現パターンや消失がみられた。内エナメル上皮にはLAMA5の上皮側の受容体であるインテグリンα3β1あるいはα6β1が存在している。そのため、EL/seaマウスの5日齢でみられた歯胚全体のLAMA5の異常な発現パターンは、受容体であるインテグリンα3β1あるいはα6β1に何らかの異常が生じたためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度では、Lef1遺伝子およびShh遺伝子を標的遺伝子として、免疫染色による発現の局在を検討する中で、インテグリン遺伝子を介するラミニンα5遺伝子への接着異常が歯胚消失の主な原因となっている可能性を見出し、平成24年度には、Lef1遺伝子およびShh遺伝子のin situ hybridization を実施し、同時にラミニンα5の免疫染色を行ったところ、発現の異常が認められた。以上から、歯胚の消失にはインテグリン遺伝子を介するラミニンα5遺伝子への接着異常が重要な役割を演じている可能性を示唆する研究データが得られているため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
歯胚の消失にはインテグリン遺伝子を介するラミニンα5遺伝子への接着異常が重要な役割を演じている可能性を示唆する研究データが得られているため、平成25年度にはラミニンα5のISHならびにインテグリンα3β1あるいはα6β1の免疫染色およびISHを行う。さらに、歯胚消失部位である第三臼歯ではなく、第一および第二臼歯を試料としたマイクロアレー解析により、網羅的な解析を行い、ELマウスにみられる歯胚の消失に関与するシグナルパスウェイの特定を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の繰越金と平成25円年度の研究費を併せ、マイクロアレー解析ならびにシグナルパスウェイの抽出を行う。抽出されたパスウェイ解析結果から、インテグリン遺伝子を介するラミニンα5遺伝子への接着異常が歯胚の消失の原因であることを特定し、さらに、接着異常に伴って生じるアポトーシスの影響を受ける歯の形態形成に関与する遺伝子群の相互作用についても検討を加える予定であり、上記の実験を遂行するために研究費を使用する計画である。
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