本研究はPorphyromonas gingivalis口腔感染マウスモデルを用い、口腔-消化管の粘膜免疫システムとして重要な2次リンパ組織であるパイエル板の役割に着目して、消化管における細菌に対する宿主応答が全身の炎症応答と脂質レベルに与える影響及び動脈硬化病変 の進展に関与するメカニズムを明らかにすることを目的とする。これまで口腔から摂取したPorphyromonas gingivalisが腸管において炎症応答またはマイクロインフラメーションを誘導するかについての検討を行ってきた。C57BL/6(野生型)マウス、B6.KO R/Stm Slc(動脈硬化症自然発症型)マウス、Unc93bミュータントマウスを用いてPorphyromonas gingivalis W83株を口腔より感染した。1×109 CFUの細菌をフィーディングニードルで3日ごとに経口的に投与し、7日後の血清中のIgA、IgM、IgG、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)について計測したところ、Unc93bミュータントマウスにおいてはIgA 産生が抑制されていることが明らかになった。最終年度においては非アルコール性脂肪肝モデルを用いてPorphyromonas gingivalis口腔感染による肝臓の脂肪変性についてさらに検討した。結果としてC57BL/6(野生型)マウスでは肝臓におけるIL-6、TNF-αを指標とした炎症の亢進が認められるが、Unc93b欠損マウスにおいてはIL-6、TNF-αの産生の亢進は認められなかった。現在脂肪変性について組織学的に解析をしている。これまでの結果から本口腔感染モデルにおいては細菌抗原の核酸抗原認識が門脈系循環を介した肝臓での炎症応答に重要な役割をもつことが新しい知見として得られた。
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