研究課題/領域番号 |
23593057
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柳田 学 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80379081)
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研究分担者 |
山田 聡 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (40359849)
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キーワード | 歯周病 / リゾリン脂質 / ダメージ関連分子パターン |
研究概要 |
前年度はスフィゴシンー1ーリン酸(S1P)と壊死細胞より放出される自己組織由来の内因性因子:ダメージ関連分子パターン(DAMPs: damage-associated molecular patterns)として細胞外に放出されるmRNAなどのmimicとしてToll受容体3(TLR3) によって認識される二本鎖RNAウイルス構造類似体PolyICを実験に用いていた。しかし実際に細胞外に放出される内因性物質がTLR3を介して認識されるのかは未確認であった。そこで、平成24年度は歯肉上皮細胞を壊死、融解させて内因性因子を抽出したものをnecrotic cell supernatant (NCS)とし、歯肉上皮細胞をNCSで刺激した。その結果NCS濃度依存的に歯肉上皮細胞より炎症性サイトカインIL-6、IL-8が誘導された。NCSによる歯肉上皮細胞のIL-6、IL-8産生誘導は、TLR3特異的siRNAを用いてTLR3 mRNAをknockdownした歯肉上皮細胞では部分的に抑制された。以上の結果は前年度の研究成果であるS1PとPolyICによるIL-8発現増強と考え合わせると、S1PとNCSの共刺激により、歯肉上皮細胞からの炎症性サイトカイン産生亢進の可能性が示唆されるものである。 またS1P刺激により歯肉上皮細胞に発現する表面抗原分子ICAM-1の発現が亢進することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで文献等により壊死細胞より放出される自己組織由来の内因性因子(DAMPs)がTLRを介して認識されるとの仮説のもと研究を進めていた。本年度は歯肉上皮細胞より得たNCSは、歯肉上皮細胞に発現しているTLR3を介して炎症性サイトカイン産生を誘導することを見いだせた。また歯肉上皮細胞に発現する表面抗原分子の検討にも着手できたため、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
NCSは歯肉上皮細胞に発現するTLR3を介して炎症性サイトカイン発現を誘導することを明らかにした。しかし、DAMPsを認識する他のTLRに関しても検討が必要であるため、平成25年度は歯肉上皮細胞上に発現する他のTLRに関してもNCSとの関連性を調べる予定である。また歯肉溝浸出液(GCF)よりS1Pやその他のDAMPsを検出し、歯周炎の診断や疾患活動度をモニタリングできるマーカーとなりうるかを検討する。GCFに関しては現在サンプリング中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は実験試薬購入費として320千円、培養用プラスティック・硝子器具購入費として200千円を予定している。また研究成果発表のため、国内旅費100千円、海外旅費180千円を予定している。
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