研究概要 |
近年、がん患者に対する化学療法は、技術の進歩に伴って、従来の入院下ではなく外来通院で対応するケースが増えている。岡山大学病院腫瘍センターを利用する外来がん化学療法患者の件数は、平成22年度6,106件、23年度6,504件、24年度7,008件、25年度8,364件と年々増加していた。また、岡山大学病院では、平成22年4月より腫瘍センターに歯科衛生士が配置され、同センターを受診した患者を対象に面談を行ってきた。平成22年度に792件、23年度に1,194件、24年度に1,033件の面談を実施し,25年度は1,290件と増加していた。その中で、ビスフォスフォネート(BP)製剤およびデノスマブ投与患者において、これまでに8件の顎骨壊死を見つけることができた。いずれも歯牙が欠損している部位あるいは義歯を装着している部位に認められた。 また、平成25年4月1日から6月24日の3ヵ月間、腫瘍センターで歯科衛生士と面談を行ったがん患者286名を対象に、口内炎の訴えがあった患者について解析した。その結果、BP製剤使用患者のうち口内炎の自覚がある者は、わずか3.3%であった。一方で、その他の抗がん剤を使用している者の21.2%に口内炎の自覚があり、特に大腸がんおよび血液がんの治療に使用される抗がん剤との関連性が示唆された。 以上の実態および結果を学会および当院の化学療法部門会議で発表し、関連職種の人に情報提供を行った。また、らい菌感染のハンセン病患者をモデルにした口腔内細菌感染症の病態解明および、がん患者や高齢者などの易感染性患者を対象に想定した口腔内の感染防御法の考案を行い、論文発表した。
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