当初計画していたS.aureus菌はインプラント周囲の浸出液からPCRにて検出できなかったため、最終年度であるH25年度は、インプラント周囲炎に特異的な浸出液中の細菌をマイクロバイオーム解析にて網羅的に分析した。サンプルとして①歯周病に罹患した天然歯、②健全なインプラント、③レントゲン写真上で2mm以上の骨吸収を認めるインプラント周囲炎部位から計20サンプルの浸出液を採取し、採取した浸出液から核酸画分を分離した。分離したインプラント浸出液由来DNAを外部委託にて(タカラバイオ:ドラゴンジェノミクスセンター)次世代シークエンサー分析した。 16S rRNA菌叢解析および菌叢比較解析を行った結果、S.aureusの属するG.Stapylococcus属では①天然歯の1サンプル、③インプラント周囲炎の2サンプルで検出されたがインプラント特異的ではなかった。③インプラント周囲炎に特異的に検出された菌は残念ながら確認できなかったが、①および③に優位に存在する菌が複数確認された。それらは、G.Alkalibacterium属、G.Halomonas属、G.Treponema属、G.Acidaminococcus属などであった。特にG.Acidaminococcus属は③周囲炎で高割合で存在していた。 細菌叢の解析より天然歯とインプラントの差異、健全なインプラントと周囲炎の差異があることが示唆される結果を得られた。1菌種のみでインプラント周囲炎の判別を行うのは困難と思われる解析結果であったが、複数の菌種を組み合わせることでインプラント周囲炎の早期判別が可能になるかもしれない。そのためには上記の属の菌種のさらなる解析が必要であると考える。
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