研究課題/領域番号 |
23593065
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
尾崎 幸生 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60204187)
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研究分担者 |
原 宜興 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60159100)
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キーワード | TLR4 / TLR2 / TNF-α / IL-23 / Th 17 / IL-17 / 骨吸収 |
研究概要 |
8週令の雄性マウスの下顎臼歯部歯肉に、TLR2ライガンドであるS.aureusのペプチドグリカン(PGN)およびTLR4ライガンドであるE.coliのリポポリサッカライド(LPS)を1回につき50μg/3μl、また、PGN+LPS(1回につき各々5μg/3μl)をそれぞれ13回づつインジェクトし、屠殺・固定脱灰・パラフィン包埋して4μm厚の標本作製し、Th17関連サイトカインであるTNF-αおよびIL-23の抗体で免疫染色を行った。インジェクト部のTNF-α、IL-23陽性細胞をカウントしたところ、単位面積あたりの数がTNF-αの場合、PGN+LPS刺激>LPS刺激>PGN刺激の順に、IL-23の場合PGN+LPS刺激>PGN刺激>LPS刺激の順に多かった。PBMCをTLR2とTLR4を同時刺激した場合、TNF-αが相乗的に産生されることはYamaguchiらが2009年に報告しているが、それと今回のin vivoでの結果が一致した。また、LPSおよびPGNでマウスの骨髄マクロファージを刺激したところ、抗TNF-αで破骨細胞形成がブロックされたので、TLR2, TLR4誘導は骨細胞形成にはTNF-αが関与していることが分かった。2012年に報告したKishimotoらの実験ではLPSとPGNを複合投与した場合、それぞれ単独で作用させた場合に比べて破骨細胞形成が相乗的に促進されたが、そのメカニズムの一つはLPSとPGNを複合投与した場合にTNF-αの産生が相乗的に促進されたためであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目的は、マウスの歯肉にTLR4ライガンドであるLPSと培養で作製したTh17を注入して破骨細胞の出現を検討する予定であったが、破骨細胞の出現がTh1, Th2を注入した時に比べて顕著に促進されてはいなかった。そこで、最近当教室のKishimotoら(2012)が、LPS単独、TLR2ライガンドであるPGN単独よりもLPSとPGNを同時に加えた時のほうが、破骨細胞の出現頻度が高かったこ とを報告したのを受けて、LPSのみではなくPGNをそれぞれ単独もしくは同時注入した場合のTh17出現頻度とTh17の活性化に大きく関わっているとされるIL-23の動態と破骨細胞出現の関連性をみることとした。また、当教室ではTLRs誘導性破骨細胞にTNF-αが大きく関わっていることを確認していたので、マクロファージやTh17が産生すると言われるTNF-αの動態もみることとした。このことにより、自然免疫系の細胞が異なったTLRの刺激や同時刺激をうけると誘導されるTh細胞の種類が異なるのかどうか、すなわち自然免疫と獲得免疫の連携について検討し、またそのことが破骨細胞の出現に影響を及ぼすのかどうかを明らかにするやや焦点を変えた実験を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、マウスの標本を用いてTLR2およびTLR4もしくはその同時刺激時におけるIL-17の動態を免疫染色を用いて検討する。さらに今後、PBMCを用いてTLR2とTLR4の同時刺激が、TNF-αやIL-23、IL-17を相乗的に産生させるメカニズム、およびIL-23ひいてはIL-17がTLR2刺激に比べてTLR4刺激によってより誘導されやすいメカニズムをin vitroの系を用いて解明していきたい。また、マウスの骨髄細胞を採取し、LPS, PGN, LPS+PGNを加えた時のTNF-αやIL-23, IL-17の動態を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、IL-23, Th17検索のための免疫染色を行うにあたり、必要な試薬や器具を補充する。つぎに、骨髄採取のためのマウスの購入や負荷に必要なLPS, PGN, ELISAキットなどの試薬・器具の購入にあてるつもり である。また、情報収集のための学会出席および発表の費用にあてる。
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