研究課題/領域番号 |
23593066
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
金子 高士 長崎大学, 大学病院, 講師 (10284697)
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研究分担者 |
原 宜興 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60159100)
吉村 篤利 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70253680)
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キーワード | 歯周病源細菌 / IL-1β / カスパーゼ1 / インフラマソーム / NLRP3 / NLRP1 / NLRC4 / ペプチドグリカン |
研究概要 |
インターロイキン(IL)-1βは歯周病における組織破壊や歯槽骨吸収に密接に関連している。活性化型IL-1βの誘導には、転写因子NF -κBを活性化するToll-like receptor(TLR)やNOD-like receptor(NLR)による刺激とカスパーゼ-1を活性化するインフラマソームの活 性化の両方が必要である。本研究ではインフラマソーム活性化機構に着目し、その制御によって歯周炎症反応を制御する可能性を追求する。 歯周病原細菌のPorphyromonas gingivalis, Aggregatibacter actinomycetemcomitans, Fusobacterium nucleatumの死菌体でPMA分 化ヒトマクロファージ系細胞株THP-1細胞を刺激すると、培養上清中にIL-1βの産生が観察された。IL-1β産生に対するカスパーゼ-1 の役割を検討するために、カスパーゼ1の特異的インヒビターのAc-YVAD-CMKで前処理を行ったところ、IL-1βの放出はほぼ完全に抑制された。このことから、歯周病原細菌刺激時のTHP-1細胞のIL-1βの放出はカスパーゼ-1依存性であることが示唆された。次にNLRP3インフラマソームインヒビターのグリブリドでTHP-1細胞を前処理した後に、歯周病原細菌による刺激を行った。グリブリド処理は歯周病原細菌によるIL-1β産生を部分的であるが有意に抑制したが、IL-8の産生は抑制しなかった。以上の結果より歯周病原 細菌によるTHP-1細胞のIL-1βの産生にはNLRP3インフラマソームを介したカスパーゼ-1の活性化が関与することが明らかになった。今 回の実験でグリブリドが部分的な抑制しか示さなかったことは、他のNLRP1, NLRC4インフラマソームの関与を示唆しているのかもしれ ない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インフラマソームコンポーネントのNLRP3, NLRP1, NLRC4の役割を明らかにするため、shRNAを用いた遺伝子発現抑制やドミナントネガ ティブ発現による機能抑制を計画していたが、THP-1細胞へのshRNAプラスミドやドミナントネガティブ発現プラスミドの遺伝子導入が 困難なため、NLRP3, NLRP1, NLRC4の発現または機能抑制が達成できていない。エレクトロポレーションや様々なトランスフェクショ ン試薬を使用したがいずれも満足いく結果ではなかった。そのためマクロファージ細胞株の変更し、U937とHL-60細胞株を使用し実験を行ったが結果は同様であった。これはプラスミドDNAをトランスフェクションすることによって、何らかのシグナルが細胞におこることによって、細胞死を誘導することによることが明らかになった。そのためインフラマソームコンポーネントのタンパク発現抑制には直接siRNAをトランスフェクションするかもしくは使用する細胞を歯肉上皮細胞や歯肉繊維芽細胞等の別の細胞に変更する必要があると考えられた。 また歯周病源細菌刺激時のTHP-1細胞培養情勢中のカスパーゼ1のプロセッシングをWestern blottingで観察しようとしたが、検出できなかった。そのため実験方法の変更が必要と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
まず歯肉上皮細胞と歯肉線維芽細胞を用いて実験を行う。作製したshRNA発現プラスミドやドミナントネガティブ発現プラスミドを歯肉上皮細胞や歯肉線維芽細胞にトランスフェクションした後に、各種歯周病原細菌で刺激し、IL-1βの産生における各インフラマソームコンポーネントの役割を明らかにする。しかしながらこれらの細胞はIL-1βのいいソースでないため実験の遂行には困難が予想される。その場合には各インフラマソームコンポーネントに対するsiRNAを設計し、THP-1細胞に一過性にトランスフェクションすることによることにより実験を推進していく予定である。 また歯周病源細菌刺激時のTHP-1細胞培養情勢中のカスパーゼ1のプロセッシングの解析は、実験手法を変更し、培養上清濃縮あるいは免疫沈降法を行った後にWestern blottingを行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
インフラマソームコンポーネントの役割を明らかにするため、shRNAを用いた遺伝子発現抑制やドミナントネガ ティブ発現による機能抑制を計画していたが、THP-1細胞へのshRNAプラスミドやドミナントネガティブ発現プラスミドの遺伝子導入が 困難で機能抑制が達成できていない。エレクトロポレーションや様々なトランスフェクショ ン試薬を使用したがいずれも満足いく結果ではなかった。そのため実験方法の変更を余儀なくされたため未使用額が発生した。 また歯周病源細菌刺激時のTHP-1細胞培養情勢中のカスパーゼ1のプロセッシングをWestern blottingで観察しようとしたが、検出できなかった。そのため実験方法の変更が必要と考えられ、未使用額が発生した。 まず歯肉上皮細胞と歯肉線維芽細胞を用いて実験を行う。作製したshRNA発現プラスミドやドミナントネガティブ発現プラスミドを歯肉上皮細胞や歯肉線維芽細胞にトランスフェクションした後に、各種歯周病原細菌で刺激し、IL-1βの産生における各インフラマソームコンポーネントの役割を明らかにする。しかしながらこれらの細胞はIL-1βのいいソースでないため実験の遂行には困難が予想される。その場合には各インフラマソームコンポーネントに対するsiRNAを設計し、THP-1細胞に一過性にトランスフェクションすることによることにより実験を推進していく予定である。 また歯周病源細菌刺激時のTHP-1細胞培養情勢中のカスパーゼ1のプロセッシングの解析は、実験手法を変更し、培養上清濃縮あるいは免疫沈降法を行った後にWestern blottingを行う予定である。
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