研究実績の概要 |
インターロイキン(IL)-1βは歯周病における組織破壊や歯槽骨吸収に密接に関連している。活性化型IL-1βの誘導には、転写因子NF -κBを活性化するToll-like receptor(TLR)やNOD-like receptor(NLR)による刺激とカスパーゼ-1を活性化するインフラマソームの活 性化の両方が必要である。本研究ではインフラマソーム活性化機構に着目し、その制御によって歯周炎症反応を制御する可能性について実験を行った。 歯周病原細菌のPorphyromonas gingivalis, Aggregatibacter actinomycetemcomitans, Fusobacterium nucleatumの死菌体でPMA分化ヒトマクロファージ系細胞株THP-1細胞を刺激すると、培養上清中にIL-1βの産生が観察された。このIL-1βの産生はアクチン重合阻害剤のCytochalasin Dにより影響を受けなかった。次にIL-1β産生に対するカスパーゼ-1 の役割を検討するために、カスパーゼ1の特異的インヒビターのAc-YVAD-CMKで前処理を行ったところ、IL-1βの放出はほぼ完全に抑制された。このことから、歯周病原細菌刺激時のTHP-1細胞のIL-1βの放出はカスパーゼ-1依存性であることが示唆された。次にNLRP3インフラマソームインヒビターのグリブリドでTHP-1細胞を前処理した後に、歯周病原細菌による刺激を行った。グリブリド処理は歯周病原細菌によるIL-1β産生を部分的であるが有意に抑制したが、IL-8の産生は抑制しなかった。以上の結果より歯周病原細菌によるTHP-1細胞のIL-1βの産生にはNLRP3インフラマソームを介したカスパーゼ-1の活性化が関与することが示唆された。
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