研究課題/領域番号 |
23593071
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
川村 浩樹 日本歯科大学, 歯学部, 准教授 (60256998)
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研究分担者 |
杉本 昌弘 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30458963)
鴨井 久博 日本医科大学, 医学部, 准教授 (20297972)
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キーワード | メタボローム / 歯周病 / 唾液 |
研究概要 |
本研究の目的は、歯周病を唾液で勘弁に検査するためのマーカーを探索することである。既存の方法としては遊離ヘモグロビン(F-Hb)と乳酸脱水素酵素(LDH)の定量値を組み合わせた検査方法が開発されているが、本研究ではより小さな分子である代謝物に着目する。代謝物を網羅的に探索するメタボローム解析の方法論として様々あるが、唾液の大部分が水分であることから、キャピラリー電気泳動・時間飛行型質量分析装置(CE-TOFMS)を用いて水溶性(=イオン性)代謝物質の解析を行うこととした。健常者だけではなく、重度の異なる歯周病患者(限局性中等度歯周炎、広汎性中等度歯周炎、広汎性重度歯周炎)の唾液を収集し、これらを解析することによって、重度に相関して変動するマーカーの特定を行う。更に一部の症例に関しては治療前後の唾液も採取し、個人差の影響を除去したデータでのマーカーの変動も確認する。また、感度・特異度の高いマーカーが得られた場合は、勘弁な測定系(例えばキャピラリー電気泳動・四重極質量分析装置や抗体を使った方法)でのマーカーの評価も行い実用化・汎用化に向けた検討を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに2施設から合計48サンプルの唾液を収集した。詳細病状の診断状況に加え、年齢、性別だけでなく、残存歯数、唾液分泌量やpH、喫煙状況(喫煙歴も含む)、高血圧や癌などの基礎疾患、投薬状況、最終食事とサンプリングとの間の時間などの状況を採取した。これらの唾液に関して、代謝物の可能性のある物質を全て抽出するノンターゲット解析を実施した。500種類を超える代謝物を検出することができ、244物質は標準物質を用いて同定・定量できた。また、陽イオンで156物質、陰イオンで188物質に関しては標準物質とは一致しない未知の代謝物であり、相対的な定量のみを実施した。この他に標準物質299化合物に該当するピークは検出できない結果であった。現在、これら同定・定量ができた物質のデータ解析を実施しているところであり、重度との相関や交絡因子との関係を調べ、マーカーの候補を絞り込んでゆく作業を実施する。例えば、物質が特定できた物質の中では、ウレアやアミノ酸の濃度が高いが、乳酸やピルビン酸の濃度も高く定量することができた。これらは、既存の唾液検査方法である乳酸脱水素酵素の基質と生成物であり、整合性が取れる結果が得られるかどうかを検討してゆく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに測定データ(生データ)から物質の同定・定量までは終了しており、今後はマーカーの候補となる物質の絞り込みと、複数マーカーによる診断数理モデル(あるいはインデックス)の開発を行う。更に唾液検体の収集は継続し、より大きな検体数でマーカーの精度の検証は行う。また、マーカーとなる物質の絞り込み後は、より勘弁な測定方法で同等の精度が確保できるかを検証し、今後との実用化に向けた基礎データを収集する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験の条件設定を決定することに当初の予想より時間を有し、被検者の選定に手間取ったことにより実験の進行に若干の遅れが生じている。そのため現在、データの解析中であり、今後、学会における発表、論文作成などを行っていくために今年度の使用額が生じている。 今年度は、引き続きデータの解析を行うための試薬購入などの消耗品と、学会発表、論文作成などの旅費、投稿費などに充てていく計画である。
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