研究課題/領域番号 |
23593076
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
大山 秀樹 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (90280685)
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研究分担者 |
寺田 信行 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50150339)
中正 恵二 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (00217712)
山田 直子 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10319858)
山根木 康嗣 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00434944)
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キーワード | ヒト歯根膜由来細胞 |
研究概要 |
本研究は,IL-22を用いた新しい歯周組織再生療法の可能性を示すことの一環として,歯根膜(PDL)細胞に対するIL-22の生物学的活性を明らかにすることを目的とする。前年度の本研究課題において,1.IL22RA1遺伝子発現が,IL-1βおよびTNF-α存在下において上昇すること,2.IL-22はPDL細胞の増殖に対して影響を与えないが,その石灰化物形成能を亢進させることを明らかにした。本年度は,1)IL-22刺激を受けたPDL細胞の遺伝子プロファイルについて網羅的な解析を行った。さらに,前年度の結果において,TNF-αがPDL細胞のIL-22レセプター発現を上昇させることから,2)TNF-α存在下でのIL-22刺激PDL細胞の生物活性の変化を調べた。それらそれぞれの研究計画から,以下の結果を得ることができた。 1.Agilent社製Whole Human Genome Microarray Kitを用いることによって,IL-22刺激の有無により,発現量が異なる遺伝子を多数特定することに成功した。得られた結果をもとに,Ingenuity Pathway Analysisを行うことにより,その多くが,細胞の分化・増殖および代謝に関わる遺伝子群,あるいは感染防御に関わる遺伝子群であることが明らかとなった。なかでも,増殖誘導およびアポトーシスに関わる遺伝子群の発現がIL-22によって誘導される傾向にあった。 2.TNF-αは,PDL細胞のIL22RA1遺伝子発現を上昇させるにもかかわらず,IL-22によるhPLCの石灰化ノジュール形成促進を著しく阻害した。しかし,その一方でIL-22は,TNF-α刺激によって誘導されるCCL2等のケモカイン遺伝子発現に対して相乗的効果を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,IL-22がPDL細胞に対して示す生物学的活性を明らかにすることを目的として, IL-22がPDL細胞の細胞増殖に及ぼす影響,またIL-22がPDL細胞の石灰化物形能に及ぼす影響を明らかにしてきた。その流れにおいて,本年度は,1.IL-22刺激を受けたPDL細胞の遺伝子プロファイルを網羅的に解析すること,および2.単クローン化したPDL 細胞のIL-22 の生物学的活性の評価を実施する計画を立て,1.については,結果を得るに至り,また2.についても単クローン化PDL 細胞の準備を行うことができた。その一方で,炎症病巣局所において考慮すべきTNF-α等の炎症性サイトカインが存在することによってIL-22等のTh17サイトカインの作用が修飾されることが近年報告された。これらの報告およびTNF-αがPDL細胞のIL-22レセプター発現を上昇させるという前年度の結果,さらには歯周病巣局所におけるTNF-α濃度の上昇を考慮すれば,IL-22刺激PDL細胞の生物活性にどのような変化を及ぼすかについて把握することは不可欠である。これら遺伝子プロファイルおよびTNF-αが及ぼす影響に関する結果については,今後の計画を進めるうえで,重要な指標となる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行った遺伝子プロファイルの網羅的解析の結果から,IL-22刺激の有無によって発現量が異なる遺伝子群の多くが細胞の分化・増殖および代謝に関わる遺伝子であることが明らかとなった。前年度に明らかとなったIL-22がhPLCの細胞増殖に影響しないという結果と併せて考えると,IL-22は,hPLCに含まれる少数の細胞群に対してのみ増殖を誘導し,石灰化制御に関わっているのかもしれないことが考えられた。これらのことを踏まえ,PDL細胞が複数の細胞亜群から構成される集団であることを考えあわせると,単クローン化したPDL細胞を用いた実験系を行うことによって,IL-22がどの細胞集団に対して影響を及ぼしているかを明らかにすることが可能となる。次年度は,単クローン化したPDL細胞を用いた実験を中心として研究を進め,IL-22がPDL細胞に対して示す生物学的活性に関わる機序を明らかにすることに努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.本年度に引き続き,PDL細胞株の単クローン化を行い,現在と同様の実験系を進めるため,細胞の継続培養に必要となる培地および血清を購入する必要がある。さらに,in vitro培養系における種々の刺激タンパク(リコンビナント・ヒトIL-22を含む)およびその産生物の検出・同定を行うための試薬を購入する必要がある。 2.IL-22刺激を受けたPDL細胞の遺伝子プロファイルを網羅的に解析した結果から,発現量が異なる遺伝子をターゲットとした解析をreal-time PCR法によって行う必要があり,プライマーの合成およびその試薬を購入するために研究費を使用する。 3.本研究に関わる意見の交換を行い,研究の発展のために有用となる情報を収集するため,多くの研究者と共同研究打ち合わせを行う。その際に必要となる旅費として研究費を使用する。 4.研究の成果を学会および論文にて発表する。学会に参加するための旅費および論文投稿料,英文校正費等を研究費から使用する。
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