研究課題/領域番号 |
23593079
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研究機関 | 愛知学院大学短期大学部 |
研究代表者 |
稲垣 幸司 愛知学院大学短期大学部, その他部局等, 教授 (50211058)
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研究分担者 |
亀井 英彦 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (50421243)
森田 一三 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (50301635)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 歯周炎 / 喫煙 / ニコチン代謝能 / 遺伝子多型 / CYP2A6 / 受動喫煙 / コチニン |
研究概要 |
歯周病は生活習慣病であり、平成17年歯科疾患実態調査の結果によると、国民の8割以上に何らかの歯周病所見が認められると報告されている。一方、成人の喫煙実態をみると、平成20年厚生労働省国民健康栄養調査から、国民(成人)の喫煙率は21.8%であり、先進国としては、いまだ最悪の水準であることがわかる。歯周炎と喫煙との関連性については、これまでに数多くの研究がされており、喫煙者の歯周病罹患率は、非喫煙者に比べ約2~9倍高いことや、禁煙することにより歯周病に対するリスクが軽減することが報告され、近年では広く知られるようになってきた。しかし実際の臨床において、喫煙者の中に著しい歯周組織の破壊を伴う重度歯周炎患者がいる一方で、喫煙者であっても歯周炎を発症しない者もいる。タバコの主な有害成分であるニコチンの代謝物にはニコチンのような薬理作用がないため、個人のニコチン代謝能の優劣が、喫煙者における歯周炎の発症や進行のしやすさに関連があるのではないかと考えた。 そこで喫煙歴を有する歯周炎患者群と、喫煙歴を有する歯周組織健常者群において、ニコチン代謝能との関連性が示唆されているCYP2A6遺伝子多型解析を行い、両群間の遺伝的なニコチン代謝能の差異を検討することで、歯周炎の宿主因子としてのニコチン代謝能の優劣の関与を明らかにすることを目的とした。これらが明らかになると、喫煙歴を有する歯周組織健常者や喫煙を開始する前の未成年者の歯周病予防や、喫煙歴を有する歯周炎患者に対する具体的な禁煙支援が可能になり、国民の生活の質の向上が期待できる。 当該年度は、研究実施計画にある通り、研究被験者からのゲノムDNAのサンプリングを実施した。今年度も引き続きサンプリングを実施していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究期間附属病院に来院・通院する歯周病患者の喫煙率が、予想よりも低く、サンプリングがやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
喫煙歴を有する歯周炎患者群と、喫煙歴を有する歯周組織健常者群において、ニコチン代謝能との関連性が示唆されているCYP2A6遺伝子多型解析を継続して進めていく。 次に、喫煙歴を有さない者を対象に、EIAキットによる唾液・尿中のコチニン量測定を行い、一定量のコチニンが検出された者を受動喫煙者と診断する。喫煙歴を有さない受動喫煙者のうち、歯周病所見の認められる歯周病患者群と、所見の認められない歯周組織健常者群を対象に、CYP2A6遺伝子の多型解析を行い、受動喫煙に関連する歯周病とCYP2A6遺伝子との関係を検討する。また受動喫煙者に対し、受動喫煙に関連する気管支喘息などの呼吸器疾患、中耳疾患、胎児期の発育異常、心疾患など、家族の喫煙状況について確認する。さらに、心理的ニコチン依存度を、加濃式社会的ニコチン依存度質問票(The Kano Test for Social Nicotine Dependence, KTSND)により判定する。 さらに、受動喫煙のある学生の歯肉のメラニン色素沈着の有無とCYP2A6遺伝子多型との関係を検討する。対象は、受動喫煙がバイオマーカーで確認され、歯肉のメラニン色素沈着の認められる学生50名とコントロールとして、受動喫煙がバイオマーカーで確認され、歯肉のメラニン色素沈着の認められない学生50名とする。歯肉のメラニン色素沈着の判定は、Hanioka らの基準に準じて点数化する。口腔内規格写真は、歯肉のメラニン色素沈着を定量的に評価し、その後、経時的な変化を追跡するため、一定条件下で、画像補正用のカラーチャートを入れた撮影を行う。撮影した画像は、コンピュータに入力し、画像編集ソフトを用いて、RGB別、遊離歯肉部と付着歯肉部別に輝度インデックスを比較・検討し、対象者のCYP2A6遺伝子の多型解析と歯肉のメラニン色素沈着との関連性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
CYP2A6遺伝子多型の解析、バイオマーカー測定のためのEIAキットの購入、途中経過を海外で発表するための準備・渡航費等に使用する予定である。
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