研究課題
嚥下運動は,ヒトが経口摂取する限り必須の運動である。嚥下に関与する大脳機能については,一定の知見が得られていない。近年, 新たな脳機能評価として機能的近赤外線スペクトロスコピー装置(functional near-infrared spectroscopy:fNIRS)が注目されている が,咀嚼筋の血流変化も拾ってしまうという欠点がある。そこで本研究では,健常者・健常高齢者・嚥下障害患者を対象とし,咀嚼嚥 下関連動作時のfNIRSによる脳血流測定に加え,咀嚼筋を筋電図でモニタリングすることでNIRS信号と対比し,高齢者や嚥下障害患者 における正確な摂食・嚥下運動時の脳機能解析法を確立することを目的とする。初年度は健常者を対象とし,基礎データ収集および脳 機能解析法の確立を主たる目標とした。咀嚼嚥下関連動作時のfNIRSによる脳血流測定に加え,咀嚼筋を筋電図でモニタリングすることでNIRS信号と対比し,咀嚼運動アーチファクトの補正を考慮した脳機能解析方法を確立した。健常ボランティア(本学学生および職 員)10人を対象とした。被験者はfNIRSの頭頂様ファイバホルダを装着し,背もたれ付きの椅子に座位をとった。対象となる被験者の 頭部に帽子状のファイバーホールドシステムを装着した。側頭部,咬筋部,およびオトガイ部に筋電図電極またを装着し,パソコン上で嚥下運動,咀嚼筋筋電図のモニタリングを行った。数種類の摂食・嚥下関連動作(咀嚼運動,随意嚥下運動,反射嚥下運動)をさせ,脳血流測定を行った。今年度は,高齢患者5人を対象に測定してところ,水嚥下により一次運動野・感覚野の外側部が賦活されることがわかった。
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Gerodontolog
巻: 31 ページ: 11-18
10.1111/j.1741-2358.2012.00685.x.