研究課題/領域番号 |
23593083
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丹田 奈緒子 東北大学, 大学病院, 助教 (00422121)
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研究分担者 |
星川 康 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (90333814)
高橋 信博 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60183852)
小関 健由 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80291128)
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キーワード | 肺がん / 呼気分析 / 周術期口腔ケア / 口臭 |
研究概要 |
本申請の目的は、肺がん患者の 口腔について二次元的な気体解析から患者の病態を反映した口腔環境指標を構築すること、さらには呼気と口内気体を比較検討 することにより、口内気体分析が肺がんのスクリーニングとしての呼気分析に寄与できる基盤を究明することである。 平成23年度は揮発性硫黄化合物、有機化合物質検出用分析装置の調整、口腔内細菌由来発生気体に ついて分析装置を使用しての検索、さらには本研究を臨床患者に実施するための学内倫理委員会への承認申請を行い、大学院歯学研究科倫理専門委員会から本研究の臨床患者への実施が承認された(受付番号23-17)。 平成24年度は前年度の予備実験をもとに、肺がん手術目的で東北大学病院呼吸器外科に入院中の12名の患者さんを対象に研究を遂行した。書面での同意を得、術前専門的口腔ケア前後、手術後1週間の時系列で、朝食前の早朝に唾液採取、口内気体と呼気採取、分析を行った。口腔ケア時には口腔内診査、口腔清掃、口腔衛生指導を行い、退院前に口腔状況の改善を確認した。唾液中の総細菌数は主にインピーダンスの変化を使用した迅速測定器を用いて刺激 時唾液採取直後生菌数を測定し、培地を用いて嫌気培養、好気培養によって総菌数に占める連鎖球菌の比率をみた。さらに唾液を嫌気、好気下で培養後発生した気体について、揮発性硫黄化合物、有機化合物検出用分析装置を用いて測定した。 口腔ケアによって口気悪臭の原因とされる気体が減少し、唾液の嫌気培養での連鎖球菌の比率が増加する傾向が認められた。また、唾液由来の気相には呼気中に測定された気体のいくつかの成分がほとんど含まれていないことから、口 内気体の中には呼気由来成分と、口腔内細菌由来成分が混合されていることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、初年度は、 (1)倫理委員会への申請、承認を可及的速やかに得る。(2)それと並行して採取した気体を正確に同定し、測定できるように、呼気と口内気体の基礎的なデータを収集、分析し、採取条件の設定、気体測定機器の調整をはかる。(3)承認後は実際に設定条件を確認しながら、周術期肺癌患者を対象に研究計画を実施していく。 の3項目について達成することが目的であった。 しかしながら、3月11日の東日本大震災による甚大な被害を受け、歯学研究科としての検死派遣、仮設研究棟への仮移設など、研究体制の遅れがあったことは否定しがたい。さらに、多くの高齢被災者が肺炎を発症し、中心的役割の東北大学病院医科部門での対応が重なった。このため、(1)、(2)は実施できたが、肺癌患者を対象としての(3)については実施できなかった。 平成24年度は、肺がん患者さん12名を対象に研究を遂行したが、計画書の中での予定患者数30名には及ばないという意味で、平成24年度の達成度はやや遅れている、と評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、入院患者さんの症例数を少しでも多く遂行することに集中した。患者さんの手術は緊急性が高く、それに合わせて研究できるようにと海外での学会発表は控え、国内での研究に万全の体制をとっていた。 平成25年度は研究の最終年となるため、これまでの臨床研究の成果を海外の学会で発表する予定である。同時に呼吸器外科、口腔生化学講座との協力を密にし、担当患者への研究説明と同意書への署名、謝礼の振り込み手続きなどを継続し、対象患者数を増やし、臨床の場での研究を発展させていきたい。 その上で、(1)周術期肺がん患者の臨床口腔診査指標値と、口内滞留気体のマップ上での分布状態、(2)その二次元的な測定分布と、糖尿病など全身合併症との関連、(3)肺がん摘出術前後でのマップ上の分布の変化、(4)呼気と口内気体との関連、についてそれぞれ検討していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初予定していた学会での成果発表を次年度に変更したことにより生じたものである。対象となる肺がん患者数が予定数に及ばなかったため、今年度に予定していた研究成果発表は次年度に行うこととなった。次年度の海外での研究成果発表に必要な経費として、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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