研究概要 |
(目的)多数歯を有する高齢者コホートを対象に、長期間の歯の喪失について明らかにする。(方法)1998年から2008年までの経年調査で対象とした新潟市在住高齢者のうち、70歳時点(1998年)で20本以上の歯を有していた93名について調査した。各家庭を訪問し、口腔内診査を行った。得られたデータを70歳時のものと連結し、13年間の歯の喪失について分析した。(結果)対象者93名のうち、歯の喪失は70名(75.3%)に認められた。それらのうち48名では喪失歯は3歯以下であったが、最大で12本の歯を喪失していた者もあった。70歳時に現在歯であった2,417本(一人平均25.99本)のうち、13年間で210本(一人平均2.26本)が喪失していた。歯種別では、大臼歯で喪失歯の割合が高かったが、特に下顎の7番で顕著であった(112本のうち30本喪失(26.8%))。逆に、犬歯の喪失はごくわずかであった(362本のうち4本喪失(1.1%))。歯冠の状態で喪失歯の割合を比較すると、健全歯で最も低く(1,247本のうち29本喪失(2.3%))、ブリッジの支台歯で最も高かった(161本のうち47本喪失(22.6%))。また、クラウン装着歯についても喪失する割合が高かった(395本のうち88本喪失(18.2%))。(考察および今後の課題)本調査結果から、多数歯を有する高齢者についても、大臼歯は喪失する危険度の高いことが示された。また、ブリッジの支台歯やクラウン装着歯も喪失しやすかった。これらのことは、補綴処置が大臼歯に関わる場合には長期的な歯の寿命について注意を払う必要があること、言い換えると、歯科治療にはメリットのみでなくデメリットも存在することを示唆するものである。今後の課題として、部分床義歯が歯の喪失にどの程度影響を及ぼすのかについて、引き続き調査・分析する予定である。
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