研究課題/領域番号 |
23593087
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
内藤 真理子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10378010)
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研究分担者 |
鈴鴨 よしみ 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60362472)
藤井 航 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (50387700)
瀬田 拓 東北大学, 大学病院, 非常勤講師 (60328333)
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キーワード | QOL / 摂食・嚥下障害 / 疫学研究 / リハビリテーション / 尺度 |
研究概要 |
高齢化が進む先進諸国において、摂食・嚥下機能向上に関する介入やその評価はいっそうの検討が必要な研究テーマとなっている。介入効果の評価のための主観的指標は、研究において重要な意義を持つことが推察される。平成19年~21年度科学研究費基盤研究(C)「摂食・嚥下機能向上支援とその評価に関する研究:患者立脚型アウトカム指標の開発」で作成された新規尺度について、信頼性・妥当性検証のための本調査を実施した。 名古屋大学医学部倫理委員会ならびに調査実施施設の施設内倫理委員会において、信頼性・妥当性検証調査に関する研究計画の承認を受けた。平成24年4月~25年3月に研究実施施設(藤田保健衛生大学関連施設など)を受診した摂食・嚥下障害者(入院、外来、在宅)を対象に横断調査を実施した。研究対象は20歳以上の男女とし、原因疾患は問わない。研究参加の同意が得られた者に対して質問票調査を行う。さらに、摂食・嚥下障害などに関連した医療情報を収集した。 本年度の研究成果は、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会および日本疫学会で報告をおこなった。後者では、収集されたデータを用いて摂食・嚥下障害の関連症状が健康関連QOLのどの領域に影響を与えているかを探索的に検討し、その結果を報告した。本結果より、一般集団と比較して、摂食・嚥下障害者は健康関連QOL、とりわけ身体機能、日常役割機能、社会生活機能の低下が認められた。食物が口からこぼれたり、食事時間が長くなったりすることは、日常役割機能に影響を与えていることが示唆された。また、むせによる精神面への影響も認められた。流涎は社会生活に影響を与えていることが示された。食事時間の延長は日常的な疲労につながり、健康関連QOL低下にかかわってくることも推察された。今後、解析対象数を増やして、摂食・嚥下障害の重症度やADLを考慮した分析をおこなっていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査対象者が限られていることから、データ収集に時間がかかっている。今年度は調査実施施設を拡大して取り組んだことで、平成25年3月時点で100名のデータが収集された。目標数の達成は平成25年12月の見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も継続してデータ収集をおこなう。各施設で収集した情報は連結不可能匿名化され、名古屋大学大学院医学系研究科予防医学教室へ提供される。提供された情報をデータセットとしてまとめた後、計量心理学的な分析をおこない、研究者間の討議を経て尺度を完成させる。Item Response Theory(項目反応理論)を用いて項目の絞り込みをおこなうために、150名以上のデータ収集を目標としており、平成25年12月に達成する見込みである。尺度の項目数はおよそ30を見込んでいるが、さらに10項目前後の短縮版質問紙も作成する。 尺度完成後、まず代理回答に関する研究を開始する。摂食・嚥下障害者はその他の障害を同時に有することが多々あり、QOL評価においても本人から回答が得られないケースがある。代理回答の信頼性・妥当性の検証のため、家族あるいは介護者を対象とした調査を実施する。摂食・嚥下リハビリテーションを受けている患者の家族あるいは介護者で、研究協力の同意が得られた者を調査対象とする。摂食・嚥下リハビリテーション開始時に、患者に用いる質問紙と同じもので調査を行い、データを収集する。その際、患者と調査対象者の回答が相互に影響しあうことのないよう、とくに患者自身の回答内容が調査対象者に伝わらないように配慮する。患者および調査対象者のデータを照合し、代理回答の信頼性・妥当性について計量心理学的に検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
信頼性・妥当性検証のための調査実施のための調整で、各調査施設を定期的に訪問するための旅費を必要とする。研究班会議開催は名古屋と仙台で年に1回ずつ予定しており、研究分担者を招集するための旅費も必要である。 調査実施に際しては、調査用紙(調査票、説明文書)の印刷費、それぞれの研究施設でトナーカートリッジ、紙、電子媒体購入のための消耗品費が必要である。また、研究参加者への謝礼(図書カード500円/名)や調査実施施設との連絡のための通信費も必要である。 研究成果を広く公表し、海外の研究者との交流および情報収集の機会を増やすため、学会発表を目的とした海外への渡航旅費を計上している。英文論文投稿に際しての論文投稿料、英文校閲料、別刷料を算定している。その他、情報収集のための国内学会参加を予定していることから、そのための旅費を計上している。
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