研究課題/領域番号 |
23593099
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研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
廣瀬 公治 奥羽大学, 歯学部, 教授 (10218836)
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キーワード | 歯学 / 細胞 / 歯周病 |
研究概要 |
喫煙による歯周病への影響を検討するために歯肉上皮細胞を用い、特に歯槽骨吸収に強く関与するRANKLの発現に対するニコチンの影響を検索してきた。その結果、ニコチンはアセチルコリンレセプターを介して歯肉上皮細胞からのRANKL発現をm-RNAレベルで促進していることを見い出した。一方、ニコチンは歯肉上皮細胞におけるToll-Like Receptor2(TLR-2)の発現を穏やかに誘導した。TLR-2は歯周病原性細菌であるPorphyromonasi gingivalisのリポ多糖の受容体である。そこで、歯周病原性細菌とニコチンとの相乗作用についても検索を行った。その結果、ニコチン添加群においてIkBαのデグラデーションがより促進されることが示された。さらに、重要な免疫担当細胞であるマクロファージを用いた検討では、ニコチンリポ多糖が誘導する同細胞からの炎症性サイトカインを一時的に誘導することを見い出した。そして、この一時的産生誘導にインフラマソームであるNLRP3の一時的活性化が関与していることを確認した。 以上の結果から、ニコチンは歯周組織のバリアである上皮のみならず免疫担当細胞に対しても強い害作用を及ぼすことが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯肉上皮細胞に対するニコチンの作用についてRANKLを標的とした検索を2年間実施した。その結果、当初の計画である、ニコチンが細胞の受容体を介して発揮するRANKLのmRNA発現促進機構にNF-kBが介していること、さらには、ニコチンがIkBの安定性を阻害することを歯肉上皮はもとよりマクロファージにおいても確認している。よって、当初の研究計画に照らし概ね順調に展開していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
マクロファージにおけるインフラマソームの活性化作用をニコチンが持つことを見い出したことから、さらにこの現象と当初のRANKLの発現促進とを関連付け研究を推進する。また、ヒト喫煙者と非喫煙者における歯肉溝滲出液中のOPG濃度の測定を行い、ベンチワークとフィールドワークの融合から喫煙の歯周病における害作用について考察する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
全額を物品費に充当する。その内訳の主なものは、OPG測定のためのELISA Kit及び試薬である。
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