研究課題/領域番号 |
23593101
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
福本 雅彦 日本大学, 歯学部, 准教授 (50175569)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 口腔がん検診 |
研究概要 |
本学付属病院にて取り扱われた、口腔扁平上皮癌、上皮異形成症、上皮異形成を伴わない白板症および正常口腔粘膜の症例を収集し、P53抗体を使用して免疫組織化学的検索を実施した。その結果、正常口腔粘膜においてはP53抗体に陽性所見は認められなかった。上皮異形成を伴わない白板症においても陽性所見は観察されなかった。上皮異形成症例においては中等度および高度異形成を示す症例の一部で基底層付近あるいは棘細胞層の下層領域に陽性所見が認められた。扁平上皮癌症例において高分化型において腫瘍実質の辺縁部分すなわち基底膜付近の基底細胞型腫瘍細胞や比較的各化の弱い領域の腫瘍細胞の核に陽性所見を認めた。P21抗体による検索は次年度に実施する予定である。 一方、擦過細胞に対して免疫化学的染色を実施する際に問題となる、染色作業中にスライドガラスから採取細胞が脱落する確率を少なくするべく条件設定を模索した。採取細胞を塗抹するスライドガラスに関しては様々な処理がなされたものを使用し免疫細胞化学的染色を施してみた。しかしながら、その結果は多くの塗抹細胞がスライドガラスから脱落し診断に十分な細胞量の確保がなされなかった。この結果は本研究遂行に重大な影響を与えるので、現在免疫染色時にスライドガラスから細胞脱落の要因となるような処理過程の条件や処理方法を見直しながら擦過細胞のスライドガラスからの脱落率を低下させるべく試行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
P53抗体を用いた免疫化学的検索における条件設定は把握できた。また、正常組織、上皮異形成を伴わない白板症、上皮異形成および口腔扁平上皮癌に対するP53抗体の染色性の概要も確認できたことは当初の研究計画をおおむね達成できたと考える。しかしながら、擦過細胞に対して免疫化学的染色を実施する際に問題となる、染色作業中にスライドガラスから採取細胞が脱落する確率を少なくするべく条件設定に関しては未だ解決していないことは本研究の順調な遂行を妨げている。
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今後の研究の推進方策 |
擦過細胞に対して免疫化学的染色を実施する際に問題となる、染色作業中にスライドガラスから採取細胞が脱落する確率を少なくするべく条件設定に関しては未だ解決していないことは本研究の遂行において極めて大きな問題点である。本研究の目的は口腔癌検診に有用な検査方法の構築である。擦過細胞診は口腔がん検診においては極めて有用であると考えるので上記の細胞脱落の問題の解決を図るとともに、解決が困難と判断された折には細胞脱落率が低い特殊染色を用いた擦過細胞診による口腔癌検診の実施を模索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
第一に免疫染色用の抗体およびその周辺試薬の購入に使用する予定である。また、擦過細胞が染色時に脱落せずスライドガラスに強固に残存するような、種々の市販の表面処理されたスライドガラスの使用を試行する一方、自らスライドガラスの表面処理方法を模索するために研究費を使用する所存である。
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