研究概要 |
昨年までにヒストンメチル化調節因子であるG9aの阻害剤であるBIX01294が破骨細胞分化を抑制していることを見いだし、Bosn J Basic Med Sci. 2013 vol 13, 271-275に発表した。しかしながら、G9aのノックダウンおよび、ドミナントネガティブ体の強制発現により、RANKL誘導破骨細胞分化は影響を受けなかった。これにより、BIX01294の破骨細胞分化抑制効果はG9aの作用の抑制によって起こるのでは無いことが解った。 また、同じくヒストンH3K9メチル化調節因子であるSuv39h1の阻害剤であるchaetocinはRANKL誘導破骨細胞分化を抑制した。H3K9のメチル化は転写抑制に働くことから、chaetocinの作用によりH3K9のメチル化が抑制され、破骨細胞分化抑制因子の転写が促進されると仮説を立てて実験を行ったところ、RANKL刺激により抑制されたid-1、3、mafB、irf8、bcl6の遺伝子発現がchaetocinの濃度依存的に増加している事が確認された。次にH3K9のメチル化度合いを確かめたところ、予想に反してchaetocinは濃度依存的にH3K9のメチル化を促進していた。つまり、chaetocinの破骨細胞抑制効果は今まで報告されているchaetocinのヒストンメチル化酵素Suv39h1の阻害によるものでは無く、chaetocinの持つ未知の効果によるものであることが解った。そこで、破骨細胞分化抑制遺伝子の発現を抑制すると報告されているblimp1の発現と産生をqRT-PCRおよびwestern blotで調べたところ、RANKLによって発現上昇したblimp1はchaetocin濃度依存的に発現・産生が抑制された。このことから、chaetocinはヒストンメチル化阻害と異なる作用により破骨細胞分化を抑制する事が解った。
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