研究課題/領域番号 |
23593108
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
菊谷 武 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (20214744)
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研究分担者 |
松本 宜明 日本大学, 薬学部, 教授 (10199896)
小野 真一 日本大学, 薬学部, 教授 (20246862)
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キーワード | 嚥下障害 / 嚥下内視鏡 / 脳梗塞 / パーキンソン病 / 嚥下潜時時間 / 誤嚥 |
研究概要 |
本年度は、嚥下内視鏡検査の際にチャンネル付き内視鏡用感染防止シースを用い、その先端より水を滴下することにより嚥下反射惹起時間を測定する方法の有用性を検討した。対象は日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーションセンターに嚥下障害を主訴に来院した患者65名(男性30名、女性35名、平均年齢82.6±8.9歳)を患者群とし、健常者11名(男性6名、女性5名、平均年齢29.4±4.1歳)を健常者群とした。方法としては内視鏡用感染防止シースを用いてチャンネル内に5Frビニルチューブを設置し、嚥下内視鏡検査時に0.4ml /2.0ml生理食塩水の注入を行い、注水から嚥下までの潜時時間の計測と嚥下状態の観察を行った。患者群の既往症は、脳梗塞26名、認知症22名、脳出血16名、パーキンソン病4名、廃用症候群1名、食道下咽頭癌1名であった(重複含む)。患者群と健常者群とを統計学的検討を用いて比較したところ、0.4mlの注水時は健常者群1.31秒に対し患者群6.38秒であり、2.0ml注水時は健常者群1.18秒に対し5.34秒と嚥下潜時時間に有意な差が認められた(p<0.05)。また、0.4ml注水時において内視鏡検査時に唾液誤嚥が観察された者は10.09秒、唾液誤嚥なしとされた者は5.87秒であり有意な延長が認められた(p<0.05)。本研究の結果より、チャネル付き内視鏡用感染防止シースを用いた嚥下潜時時間の測定は嚥下障害の臨床評価に有用である可能性が示された。 さらに、今年度は分担研究者の医療施設において神経内科と連携をとり8名のパーキンソン病の患者の嚥下機能評価を行った。Penetration-Aspiration Scaleでは不顕性誤嚥の所見が認められる6点以上が3名見られた。また、FOISの分類でも食形態に何らかの工夫が必要であるlevel5以下の者が5名認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
パーキンソン病対象者の集積に時間を要し、月に2名ほどの研究参加に留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究参加を依頼している患者はADLが低下している者も多く、分担研究者の医療施設に苦労して通院している状況にある。さらに、嚥下機能の評価を依頼していることになるが、評価にかかる時間や通院回数などで、研究参加を説明しても同意が得られない場合が多い。そのため、予定通りに参加者が募れていない。しかし、今後も、分担研究者の関与する医療施設において、対象者の登録に努力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
パーキンソン患者に対する検討の結果を、学会発表の予定であったが、症例が十分に集まらなかったので、学会発表は見送った。本年度も継続して、症例の蓄積を行う。
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