研究課題/領域番号 |
23593116
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研究機関 | 日本歯科大学東京短期大学 |
研究代表者 |
佐藤 勉 日本歯科大学東京短期大学, 歯科衛生学科, 教授 (60130671)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | カドミウム / タバコ / 歯周組織 / 創傷治癒 / サイトカイン |
研究概要 |
平成24年度は従来検討してきたヒト歯肉由来細胞のCdに対する感受性や細胞応答と比較するために、ヒト大腿骨由来骨芽細胞(東海大学医学部より分与)と本助成金により購入したヒト骨芽細胞キットを用いて検討した。なお、Cd濃度の設定については、初めは喫煙者が曝露されるCd濃度を含む幅広い濃度とした。得られた研究成果は以下の通りである。(1)3H-チミジンの細胞内への取り込みとMTT法により調べた細胞のCd感受性は、いずれも歯肉由来細胞に比べて骨芽細胞で高い傾向にあった。すなわち、Cd感受性は細胞種で異なっていることが示された。また、実験に用いたすべての細胞において、喫煙によって曝露されるCd濃度で、細胞の増殖や生存率が抑制されることが明らかとなった。このことは、タバコ中に含まれるCdが口腔組織にダメージを与える可能性を示している。さらに骨芽細胞にも障害を及ぼす可能性があることは、歯周治療において喫煙が阻害的要因となる可能性を示唆しているものと考える。現在、喫煙は歯周疾患のリスク要因となりうることが確実視されているが、治療過程においても阻害因子となる可能性が高いと推察される。なお、2つの骨芽細胞間の感受性の違いについては、現在検討中である。(2)Cdに曝露された骨芽細胞におけるPGE2の誘導については、喫煙者が曝露されるCd濃度付近において、観察された。(3)Cdに曝露された歯肉由来細胞におけるEGFの誘導については、曝露実験は終了し、現在試料を凍結保存している。測定キットの入荷後、早急に測定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の予定した実験の多くは予定通り終了したが、一部の項目についてはまだ測定を行っていない。その主な理由として、骨芽細胞を使用するのが初めてであり、その取扱いに慣れるのに予想外に時間がかかったことがあげられる。さらにそのことが有効期限の比較的短い測定キットの発注の遅れにつながった。次年度は細胞の取り扱いもスムースにいくと思われ、遅延なく実験を進めていくつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
歯肉細胞と骨芽細胞のCdに対する大まかな細胞応答の様子がつかめたことから、今後は作用させるCd濃度を喫煙による曝露濃度付近に設定し、より詳細な検討を行っていく予定である。特にPLA2の検討は、本研究課題で重要な位置づけとなることから、出来るだけ早急に、かつ慎重に実験を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に用いる細胞、細胞培養に必要な試薬および基本的な実験器具の多くはすでに準備出来ていることから、次年度はCd曝露された細胞が誘導する様々な化学物質の測定に用いる測定キットの購入に研究費を費やすことになる。なお、当該年度で予定していた化学物質の測定が終了しなかったため、繰り越した研究費はそれらの測定に使用する。
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