ヒト歯肉由来の上皮性細胞、線維芽細胞、ヒト大腿骨由来骨芽細胞およびヒト骨芽細胞キットを用いて、細胞のカドミウム(Cd)応答を検討した。細胞に作用させるCd濃度は、喫煙により口腔組織が曝露される可能性のある濃度に設定した。細胞のCdに対する感受性は細胞種で異なっており、誘導されるサイトカインも種類や濃度が異なることが明らかにされた。以上より、喫煙者の歯周組織はタバコ中Cdにより障害を受けていること確実となった。さらに平成24~25年度の研究結果において、実験に用いた全ての骨芽細胞において、Cdによる細胞機能の抑制が観察されたことから、喫煙は歯周治療効果を低下させる可能性があることが推察された。平成25年度の成果として、Cd曝露細胞ではPhospholipase A2(PLA2)とPGE2にが誘導されることを明らかにしたことがあげられる。誘導の程度については現時点では明らかになっていないが、これらは炎症性メディエータの律速酵素として働くと同時に、炎症、癌およびアポトーシス等に関与していると考えられている。現在、得られたデータを整理・検討しており、PLA2とPGE2の誘導のメカニズムの解明を試みている。また、骨吸収のメカニズムを解明する目的で、Cd曝露された骨芽細胞におけるcyclooxygenase(COX)の産生について解析を行っている。さらにCdによる骨吸収について検討する目的で、骨芽細胞におけるreceptor activater of NF-kB ligand(RANKEL)の産生についても解析中である。
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