研究課題/領域番号 |
23593129
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
横内 光子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10326316)
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研究分担者 |
大野 ゆう子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60183026)
村田 幸則 藤田保健衛生大学, 医療衛生学部, 助教 (00566101)
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キーワード | 外来化学療法 / システムシミュレーション / 医療システム / ベンチマーキング / Arena / 看護業務 / タイムスタディ |
研究概要 |
平成24年度は,第一に昨年度試作した外来化学療法部門のシステムモデルの精度を上げ,より現実に即した条件でシミュレーション実験を実施することを目指した。業務量調査の結果から,看護師一人一勤務帯あたり100分と最も多くを占める準備・片づけ, 60分を占める移動, 40分を占める記録など,直接患者と接しない間接業務をモデルに組み込んだ。パラメータは,準備・片づけは三角分布で最少0.02,平均0.62,最大20.47,移動では最小0.02,平均0.07,最大3.13,記録は最小0.12,平均0.86,最大11.03などタイムスタディデータを用いて算出した。朝8時から夕方17時の診療時間の各時刻帯におけるこれら間接業務の発生頻度を設定し,間接業務の発生状況を再現できるようモデル化した。 第二に,間接業務を組み込んで精度を高めたモデルを用い,患者数や看護師数,予約時間などシステムの要件を一定に定め,ベッド稼働率や患者の待ち時間などOutcomeの変化についてシミュレーションのトライアルを実施した。たとえば,看護師数を稼働率が限界に達する12名という条件にしても,患者数は午前15名午後15名でベッド稼働率が限界となることを客観的指標で示すことができた。また,後半患者の予約時間について,前の患者の点滴終了予測時間の5パーセンタイル値から95パーセンタイル値に条件を変化させ,待ち時間とベッド稼働率の変化を確認した。その結果,前半の患者の点滴終了予測時間の40パーセンタイル値の時刻に次の患者の予約を入れることで,総診療時間に占める待ち時間が40%,稼働率は60%で,最後の患者の治療終了時刻も診療時間内となる最適値候補として示すことが可能となった。 このように,一定条件下でのOutcome指標の変化を客観的に示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の目標であったベンチマーキングスコアリングについては,シミュレーションモデルの精度を高め,多様な条件を設定してのシミュレーショントライアルを実施し,複数のアウトカムでのベンチマーキングの可能性を見出すことができた。また,多様な外来化学療法部門の業務時間のパラメータを算出し,シミュレーションによって業務フローの相違によるアウトカムの変化を確認できる方法論を整備できた。 ただし,業務フローパターンについては,限られた施設の業務フローにもとづいている。H24年に予定していた質問紙調査では,データの精度が落ちる可能性が懸念されたため,業務フローについては,H24年度のシミュレーショントライアルにより検討した,1)病床数と患者数,2)看護師数,3)調剤システム,4)主治医の診察システム,5)予約システム,ならびに6)診療フローを中心に, H25年度に施設数を限定しより詳細な聞き取り調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は,システムモデルで多様な実験条件を設定し,シミュレーション実験によりベンチマーキングスコアを導出することを目的とする。多様な実験条件の設定に用いるより詳細な稼働状況を確認するために,複数施設での聞き取り調査を予定している。さらに,外来化学療法部門の業務改善に関する文献から,多様な業務フローや業務上の問題点を拾い上げ,これらの情報を参考にする。 これらの情報に基づき,1)病床数と患者数,2)看護師数,3)調剤システム,4)主治医の診察システム,5)予約システム,ならびに6)診療フローに焦点を当てて,基本モデルを修正した典型的システムモデルを複数作成する。複数の条件を設定し,各条件下での診療患者数,ベッド稼働状況,看護師稼働状況,総診療時間,患者の待ち時間,総診療時間に占める待ち時間割合,診療終了時刻などをアウトカムとしたシミュレーション実験により,ベンチマーキングを行う予定である。また,分析結果を掲載するサイトを作成し,公表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
シミュレーションソフトウェアのライセンス料,および調査費用・調査旅費,ならびにH24年度研究成果を国内外の学会で公表するための費用として使用する予定である。
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