本研究の目的は、足部の問題を抱える高齢者に提供される足ケアの身体的効果を、足部の形状改善のほか、機能性の向上といった運動力学の評価とともに、転倒予防という視点から日常の生活活動の質に関する側面を加え解き明かしていくことである。そこで、平成25年度では平成23・24年度からの継続事項を受け、施設利用高齢者への足ケア介入の効果検証への取り組みを計画として挙げた。 《施設利用高齢者のフットケア介入》 施設利用高齢者19名〔女性16名(84.2%),平均年齢 86.7歳〕を対象に、足の状態,ADL,セルフケア能力に関する調査とともに、フットケアの提供を行った。被験者の自覚症状や外観からの皮膚・爪の状態においては、3ヶ月後ならびに12ヶ月後の時点において改善傾向が認められた。爪白癬状態の評価SCIO(Scoring Clinical Index for Onychomycosis)にて、3ヶ月時点で得点の改善が認められた者が2名(10.5%)、悪化していた者が1名(5.2%)であった。さらに、8~12ヶ月時点では4名(21.0%)の得点が改善していたが、12ヶ月時点で悪化していた者が1名(5.2%)認められた。また、立ち上がり動作や立位・歩行動作などの評価において、12ヶ月時点で1名の悪化が認められたが、残りの者の評価に変化はみられなかった。また、爪の状態の変化と身体活動機能の関係においては、足の状態の改善の有無に関わらず活動評価に変化は認められなかった。身体活動性の低下が認められた者の1名については、肺炎の発症という全身状態の変化が直接的な原因と考えられた。 以上より、フットケアは爪白癬や皮膚糜爛といった皮膚病変の改善には有効な介入であることが示唆されたが、身体活動性の向上という点では明確には示すことができなかった。
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